子どもなんて、好きじゃなかった。
うるさいし、いうこときかないし、鼻水とかこすりつけてくるし……。

―― それでも、いろいろ背負って、私は親になった。

独身の時に思い描いていたような“しつけも情操教育もバッチリな余裕のある親”になんかちっともなれていないけど、それなりに、いま目の前にあるタスクを、もぐらたたきのようにやっつけながら、日々を過ごしている。

忙殺という言葉がお似合いだった乳児期を超え、手の中にいたはずのちいさな赤子は、なんだか図体のでかい生意気な子どもになっていた。

「……あれ、私、なんだか、赤ちゃん期をまったく堪能できなかったな」

友人たちに出産ラッシュが訪れ、生後1ヵ月やそこらの赤ちゃんを日々拝んだ。

「……ふわぁ!」
文字に起こすとこんな感じの声が漏れた。


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