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長らく幼児向け通信教材は、ベネッセの「こどもちゃれんじ」で独占状態であった。子どもと等身大の存在であるキャラクターの「しまじろう」と一緒に、生活習慣・しつけや知育に取り組む、玩具・絵本・DVD・育児情報誌などが入った年齢別幼児教材セットである。生後6ヵ月から小学校入学まで年齢別コースが用意され、毎月1回自宅に郵送されてくる。(受講費は1ヵ月あたり1,650円)

しかし2011年、その戦力地図を大きく塗り替えるかもしれない新たな商品が登場したことで、業界は話題騒然となっている。それが、NHKエデュケーショナルとNHKエンタープライズの共同開発商品「やったね!」だ(受講費は隔月で3,150円)。
なにしろこの商品、子育て世帯の視聴占有率を圧倒している、NHK教育テレビ『いないいないばあっ!』の大人気キャラクター、ワンワンを前面に押し出しているのだ。さらに入会特典には「ワンワンパペット」を用意して、これは「こどもちゃれんじ」では定番となっている「しまじろうパペット」を多分に意識したものと思われる。

「やったね!」のホームページによると、このたびスタートした「いないいないばあっ!」コースに続き、子供の成長に応じて来年からは、これまたNHK教育テレビの超人気番組を冠にした「おかあさんといっしょ」コース、そして「みいつけた!」コースを、相次いでスタートさせる模様だ。

広告代理店関係者の話では、すでに「やったね!」の広告に関しては、ベネッセ側がかなり意識をしているようで、当然ながら同商品の広告はこの業界のナンバーワン情報誌である「ひよこクラブ」(発行元:ベネッセ)には見られない。

しかしながら、なんといってもNHK教育の人気番組を冠した年齢別教材シリーズだけに、今後は「こどもちゃれんじ」とのガチンコ勝負になることが大いに推測できる。あるお母さんは「上の子はしまじろうにしたけど、下の子はワンワンのほうにしてみようかしら」と話していた。

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かつて、1970~80年代にかけて、月刊教材といえば学研の「科学」「学習」が一人勝ちであったが、訪問販売主体の同社の戦略は、やがて子どもをもつ家庭のライフスタイルの変容とともに、ダイレクトメール攻勢による販売戦略に勝るベネッセによって、その座を奪われた。

そして昨今、個人情報保護の問題でダイレクトメール攻勢が厳しくなってきたなか、こうして新たなメディアミックス戦略で商品を投入してきた「やったね!」は、果たして「こどもちゃれんじ」の牙城を崩すことになるのか、今後とも注目である。
深田洋介深田洋介
学研の編集者、AllAboutのWebエディターを経て、サイバーエージェントの新規事業コンテストでは子育て支援のネットサービスでグランプリを獲得、その後独立。現在は子育て・教育業界×出版・ネット媒体における深い知識と経験・人脈を駆使して活動中。2001年生まれの娘の父。