
日本でも、モンスターペアレント(以下:モンペア)なる単語が一般的に聞かれるようになって久しい。その意味するところは、学校や教師に自分の子どもを特別に厚遇しろと迫ったり脅したりの強烈な「クレーマー」だったり、または理屈をつけて給食費を支払ったりしないなどの「非常識な親」だったり。しかし、モンペアなる語が一般化する時点で、いかにモンペアが「浮いて」いるか、日本人の価値観がそのような親を疎んじているかが分かり、日本の親は本当に行儀がいいんだなぁと思ってしまうのである。
筆者が、とある中央ヨーロッパのインターナショナルスクールに子どもを通わせて思ったのは、モンペアは世界共通だということだった。様々な国籍、宗教、家族背景の数百家族が集う大規模校。教師やスタッフは、食べ物ひとつ、校内の張り紙ひとつに思いもかけないクレームをつけてくる保護者への対応や、価値観を異にする保護者同士のトラブルにたいそう苦慮し、かなりの労力を割いていたと思う。
インターナショナルスクールは、駐在外国人家庭が多いという性格上、生徒の転入出が激しい。一応、一クラスあたりの人数上限は決まっているが、転入出のタイミングによっては上限いっぱいになったり、逆に一クラスの人数が極端に少なくなったりするのが常なのである。
しかしモンペアは、自分の子どもは常に「私=親」が満足できる「質の良い教育」のもとにあるべきだと考えるので、例えば幼稚園のあるクラスで去年の実績(一クラス16人)よりも3人多いと、「去年よりも教育の質が落ちたんだわ。これは一大事よ!」と学校を転覆するような大騒ぎになる。
ちなみに一クラスの上限は20人でセーフなのに、である。それが当面数ヶ月だけの一時的な状態であっても、ごく数人のモンペアグループが何度も会合を開き、声明を学校理事会に提出、担任、学年責任者、学校長が引っ張り出されて親と懇談会を重ねた。
結局、ひとまずは学年の途中で新しいスタッフを雇い、幼稚園で3クラスある中でモンペアグループがうるさい一クラスだけにアシスタントとして配置したものの、モンペア達はまた思い出したように「これじゃ根本的解決になってないわ!」と蒸し返す。
とうとう学年末まであと3ヶ月しかないという時期に、そのクラスは一部だけ分割され、先の新任教師とともにたった新規転入児4人の「みそっかすクラス」として運営されるに至ったのである。あまりに中途半端な解決策だが、結局モンペア達は自分たちの子どもが初めからいた16人クラスを維持し、新規転入児を除外したかっただけなのだ。
日本だったら、そんな自己チューな主張は周囲の無言の圧力でまかり通るはずもないのだが、どうもインター校の文化は英米(アングロサクソン)主導のきらいがあるので「言った者勝ち、ごねた者勝ち」になってしまうのである。ちなみに、そのモンペアたちは声も態度もでかい「ザ・ミーイズム」北米チームだったことは読者諸姉兄のご想像に難くないであろう。
件のモンペア以外の親は、みんな「現状で満足しているから」と我関せず、自分の子どもに火の粉が降り掛かってこない限りはスルー。のんびりラテンや悠久の国インド、品位が大事なヨーロッパ諸国も、ただ沈黙して(しかし自分たちには決して不利でないように)様子を見る。モンペアに対して、何たる自己チュー、信じられんと心の中で憤るも「決まったことには逆らえない」のは日本。インターの中の人間関係もまた、国連外交の縮図のようだった。
しかしモンペアは、自分の子どもは常に「私=親」が満足できる「質の良い教育」のもとにあるべきだと考えるので、例えば幼稚園のあるクラスで去年の実績(一クラス16人)よりも3人多いと、「去年よりも教育の質が落ちたんだわ。これは一大事よ!」と学校を転覆するような大騒ぎになる。
ちなみに一クラスの上限は20人でセーフなのに、である。それが当面数ヶ月だけの一時的な状態であっても、ごく数人のモンペアグループが何度も会合を開き、声明を学校理事会に提出、担任、学年責任者、学校長が引っ張り出されて親と懇談会を重ねた。
結局、ひとまずは学年の途中で新しいスタッフを雇い、幼稚園で3クラスある中でモンペアグループがうるさい一クラスだけにアシスタントとして配置したものの、モンペア達はまた思い出したように「これじゃ根本的解決になってないわ!」と蒸し返す。
とうとう学年末まであと3ヶ月しかないという時期に、そのクラスは一部だけ分割され、先の新任教師とともにたった新規転入児4人の「みそっかすクラス」として運営されるに至ったのである。あまりに中途半端な解決策だが、結局モンペア達は自分たちの子どもが初めからいた16人クラスを維持し、新規転入児を除外したかっただけなのだ。
日本だったら、そんな自己チューな主張は周囲の無言の圧力でまかり通るはずもないのだが、どうもインター校の文化は英米(アングロサクソン)主導のきらいがあるので「言った者勝ち、ごねた者勝ち」になってしまうのである。ちなみに、そのモンペアたちは声も態度もでかい「ザ・ミーイズム」北米チームだったことは読者諸姉兄のご想像に難くないであろう。
件のモンペア以外の親は、みんな「現状で満足しているから」と我関せず、自分の子どもに火の粉が降り掛かってこない限りはスルー。のんびりラテンや悠久の国インド、品位が大事なヨーロッパ諸国も、ただ沈黙して(しかし自分たちには決して不利でないように)様子を見る。モンペアに対して、何たる自己チュー、信じられんと心の中で憤るも「決まったことには逆らえない」のは日本。インターの中の人間関係もまた、国連外交の縮図のようだった。
![]() | 河崎環 コラムニスト。子育て系人気サイト運営・執筆後、教育・家族問題、父親の育児参加、世界の子育て文化から商品デザイン・書籍評論まで多彩な執筆を続けており、エッセイや子育て相談にも定評がある。現在は夫、15歳娘、6歳息子と共に欧州2カ国目、英国ロンドン在住。 |
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