原発事故にともなう乳幼児や妊婦の被曝リスクについては、さまざまな情報が入り乱れている。今回、原子力の専門家でもジャーナリストでもなく、医療、しかも専門医の立場からの見解を求めて、このたび日本医療学会のご協力のもと、愛育病院院長の中林正雄先生と、東京慈恵会医科大学准教授で小児科医の浦島充佳先生による「乳幼児・妊婦の方の放射能問題を考える」Q&Aに回答いただいた内容を転載させていただくことができた。

水道水については?

「日本では乳幼児では100ベクレルを超えたら飲まないようにと言われていますので、その基準以下であれば飲み続けたとしても、あるいは基準を若干超える位でも短い期間(例えば何ヵ月単位、1年間)で飲んだとしても大きな影響はありません。

大きな影響ではないとは、日ごろ我々が宇宙からの放射線や医療によって受ける放射線で被曝している量と比べても大きくないと思われることです。比較の問題であり、水道水を飲むことが将来のリスクに絶対にならないということではありませんが、普段我々はそれより多いリスクを負っており、それに比較すると非常に小さいリスクと思われます。」

野菜のリスクについては?

ほうれん草のような場合は表面についているだけなので、水道水で洗えば、水道水のものよりもずっと低い濃度になるだろうと思われます。茹でると更に減るということがテレビの報道でなされていますが、どの程度効果があるかは確かではありません。

いずれにしても、水道水が何ベクレルか、情報をきちんと聞いて、それが危険なレベルでないものならば、水で洗って野菜を食べるとかすることが、水道水以上のリスクはなくなると考えられます。

妊婦の人に水道水、食品はどうか?

nakabayashi産婦人科学会の報告では、200ベクレルのものを妊娠中、280日間のみ続けても、胎児に与える影響はおおよそ1ミリシーベルト程度です。胎児に影響するのは50~100ミリシーベルトが問題になると言われていますので、280日毎日それを飲み続けても、全く問題ないということになります。

胎児の外部被曝に関してはどうか?

外部被曝の量に関しては、一瞬の問題なのでほとんど影響が無く、余程、高い濃度のものを瞬間的に受けたとき以外には問題にはなりません。胸部CTが6.9ミリシーベルトで約7ミリシーベルトとすると、それを連続して7回受けると50ミリシーベルトになります。50ミリシーベルトというのは、胎児でも一番妊娠の早い時期(放射線に対する影響が最も強いと言われる次期)の安全限界です。

現在話題になっているのは“マイクロ”シーベルトのオーダーであるので、はるかに少ない、ということになります。チェルノブイリの原発事故では恐らく今の日本の数十倍規模の放射能が飛んでいたはずですが、その時に妊娠中の方々からは、誰も奇形児等が出ていません。

母乳に関するリスクは?

お母さんが放射能のある水をたくさん飲んでいると約1/4の濃度が母乳に出て、胎児に影響すると言われています。大人は300ベクレルが限度とされていますので、それだけを飲んでいると、母乳を飲んでいるお子さんはその1/4くらいを飲んでいることになるので約75ベクレルになります。

そうすると、幼児の場合は100ベクレル以下が安全限界とされているので、大人の安全限界を守っている限り、母乳を全部飲んでいても全く問題は無いということになります。

日本医療学会
日本医療学会 動画Q&A
社会福祉法人 恩賜財団母子愛育会 愛育病院
Dr.浦島充佳公式サイト

深田洋介深田洋介
学研の編集者、AllAboutのWebエディターを経て、サイバーエージェントの新規事業コンテストでは子育て支援のネットサービスでグランプリを獲得、その後独立。現在は子育て・教育業界×出版・ネット媒体における深い知識と経験・人脈を駆使して活動中。2001年生まれの娘の父。