chichioya100
『父親―100の生き方(中公新書)』
著者:深谷 昌志
出版社:中央公論新社
価格:\777(税込)


初版が2008年だから今から3年前、世の中に「イクメン」なる造語が出てくる少し前に発行された本書。明治以降の著名人たちの自伝100冊に書かれた、それぞれの「子どもの目から見た」父親の生き方を編纂している。そこには谷崎潤一郎、藤沢周平、松本清張といった作家から、棟方志功のような芸術家、さらにビートたけし、いかりや長介、松本人志といったタレントまで、本書で取り上げる100名の著名人はバラエティに富んでいる。
そしてその父親たちも、仕事に没頭する「背中で見せる」ような父親から、専制君主さながらに酒を飲んでは暴れる父親、ちょっと小銭が入ると子どもにご馳走してくれる気のよい父親、明治の世の中に子どもの歯の治療のために仕事を休んで付き添うような父親まで、さまざまな姿を見せてくれる。

厚生労働省「イクメンプロジェクト」のサイトによると、「イクメン」とは、子育てを楽しみ、自分自身も成長する男性のこと、だそうだ。しかし、明治の昔から、家族のライフスタイルや夫婦関係、そして父親の在り方には多様な形があったことがわかる。「父親は『イクメン』たれ」的なムーブメントにちょっと辟易としているあなたの心をほぐしてくれそうなそうな一冊である。

父親―100の生き方 (中公新書)


深田洋介深田洋介
学研の編集者、AllAboutのWebエディターを経て、サイバーエージェントの新規事業コンテストでは子育て支援のネットサービスでグランプリを獲得、その後独立。現在は子育て・教育業界×出版・ネット媒体における深い知識と経験・人脈を駆使して活動中。2001年生まれの娘の父。