保育所に預けたいのにどこもいっぱいで預けられない……、そんな「待機児童数の増加」が社会問題化して久しいが、こうした子どもにまつわる諸問題を解決しようと政府が動いているのが「子ども・子育て新システム」の実現だ。

恥ずかしながら、筆者がこのシステムの存在を知ったのは、つい最近、第二子が通う保育室からの「反対運動」のお便りによってである。「そもそも新システムって何?」と、ググってみると……内閣府の「少子化対策について」のサイトに行き着いた。これによると、新システムの目的は、
「保活」に悩まされ続けている身としては、実現されれば、バラ色!な印象だが、冒頭のように実は保育の現場では「反対」の声が大きいのである。
その理由は、「国や自治体が担っていた子どもへの責任をなくす」「営利企業の参入を促して保育を巨大市場化する」というのが主なもので、「現行制度の下で保育園を増やしながら関係者で時間をかけて議論すべき」だと訴えている。
だが、冷静に考えてみることにした。本当に保育の質は下がってしまうのか。だとしたら、何が問題なのか。それを解決する方法はないのか。「反対」ばかり唱えていても「待機児童問題」は解決しないのではないか。
内閣府の担当者に問い合わせてみた。
まず、実施のスケジュール。「確かに来年早々の国会での法案化を目指しているが、通ったとしても本格的にスタートするのは税の抜本改革と連動しており、そのタイミングとなるので、はっきりいえない。まずはお金のかからないものからスタートすることになろう」とのこと。
「お金のかからないもの」とは、各行政で指針をつくったり会議体を結成したり、ということだそうだ。つまり、ここからようやく具体的なことを決めるわけで、大枠は国が決めるが、細かいことは自治体の状況に応じて自治体が決めるということである。
であれば、自治体にきちんとした指針を作成してもらえばいいわけだ。私たちは国に向けていた矛先を自治体に向ければいいことになり、そのほうがかえって声が届きやすく実現しやすいような気がする。
そういえば地方に住んでいる子育て世代の複数の友人は「保育園なんて申し込めば入れるよ」と言っていた。はて、もしかして待機児童問題は都市部だけなのか、と思ったものである。だとすれば、それこそ地域によって必要とされている子育て支援策を導入するのがベターだろう。
確かに数年前、世田谷区の保育ママが預かり中に事故を起こしたことはあるが、「きちんとした保育士がいる」はずの区立の認可保育園でも死亡事故は発生している。また世田谷区には無認可保育所でも、保護者の評価が高い園も存在する。
要は、「保育ママだから」「認可だから」「無認可だから」「株式会社だから」と組織形態によって色眼鏡で見ないで、自分で情報を集め、自分の目で確認して子どもの預け先を選ぶのが大前提だということだ。
逆に公立認可保育園の“(公務員的)融通のない対応”にがっかりしたこともある。この点についてはお互いのイイトコ取りをすればいいのではないか。そして監督する自治体が、保育所を運営する組織としてふさわしいかを、定期的かつ継続的に監査・評価することが必要だろう。そこにはもちろん保護者の評価も含まれるべきである。
「拙速な改革はいけないという意見もあるが、今日の実態を見れば待ったなし」という内容の、子育ての世界ではよく知られている有識者のコメントもあった。確かにその通りで、こちらとしては、とりあえず、早く“希望する保育園”に入りたい。
「われわれの広報のしかたもよくないのかも」とは前述の内閣府の担当者の弁で、これは賛成派と反対派に分かれて物議をかもしているTPPと似たような構図である。
(都市部の)待機児童をなくし、保育の質、子どもの健やかな育ちを確保するために本当に必要なのは何か――周囲に惑わされずに、真実は何かを自分で確かめて判断していきたいものである。

恥ずかしながら、筆者がこのシステムの存在を知ったのは、つい最近、第二子が通う保育室からの「反対運動」のお便りによってである。「そもそも新システムって何?」と、ググってみると……内閣府の「少子化対策について」のサイトに行き着いた。これによると、新システムの目的は、
- 「すべての子どもへの良質な成育環境を保障し、子どもを大切にする社会」
- 「出産・子育て・就労の希望がかなう社会」
- 「仕事と家庭の両立支援で、充実した生活ができる社会」
- 「新しい雇用の創出と、女性の就業促進で活力ある社会」
- 「政府の推進体制・財源の一元化」
- 「社会全体(国・地方・事業主・個人)による費用負担」
- 「基礎自治体(市町村)の重視」
- 「幼稚園・保育所の一体化」
- 「多様な保育サービスの提供」
- 「ワーク・ライフ・バランスの実現」
保育の現場からは「反対」の声が大きい“新システム”
これまで新聞でよく見かけていた「幼保一体化」も、この新システムの構成要素だということも初めて知った。ほかに学童保育の問題や妊婦検診なども含まれ、まさに「子ども・子育て」に関するあらゆる内容がてんこ盛り。「保活」に悩まされ続けている身としては、実現されれば、バラ色!な印象だが、冒頭のように実は保育の現場では「反対」の声が大きいのである。
その理由は、「国や自治体が担っていた子どもへの責任をなくす」「営利企業の参入を促して保育を巨大市場化する」というのが主なもので、「現行制度の下で保育園を増やしながら関係者で時間をかけて議論すべき」だと訴えている。
「反対」ばかり唱えていても「待機児童問題」は解決しない
政府は2013年度からの段階的な導入を目指しており、十分に議論されないままに成立してしまうことに疑問視する声も少なくない。確かに“反対派”のサイトを見ていると、「このまま知らない間に法案が通って、保育の質が下がったらヤバイ!」と思ってしまう。だが、冷静に考えてみることにした。本当に保育の質は下がってしまうのか。だとしたら、何が問題なのか。それを解決する方法はないのか。「反対」ばかり唱えていても「待機児童問題」は解決しないのではないか。
内閣府の担当者に問い合わせてみた。
まず、実施のスケジュール。「確かに来年早々の国会での法案化を目指しているが、通ったとしても本格的にスタートするのは税の抜本改革と連動しており、そのタイミングとなるので、はっきりいえない。まずはお金のかからないものからスタートすることになろう」とのこと。
「お金のかからないもの」とは、各行政で指針をつくったり会議体を結成したり、ということだそうだ。つまり、ここからようやく具体的なことを決めるわけで、大枠は国が決めるが、細かいことは自治体の状況に応じて自治体が決めるということである。
地域によって必要とされている子育て支援策を考えるべき
例えば反対派は新システムによって「保育所を自己責任で探さねばならなくなる」ことを懸念しているが、「確かに原則としては施設と直接交渉になるが、実際に待機児童が多い自治体はそんなことはできず、自治体が調整せざるをえないだろう」とのこと。であれば、自治体にきちんとした指針を作成してもらえばいいわけだ。私たちは国に向けていた矛先を自治体に向ければいいことになり、そのほうがかえって声が届きやすく実現しやすいような気がする。
そういえば地方に住んでいる子育て世代の複数の友人は「保育園なんて申し込めば入れるよ」と言っていた。はて、もしかして待機児童問題は都市部だけなのか、と思ったものである。だとすれば、それこそ地域によって必要とされている子育て支援策を導入するのがベターだろう。
自分の目で確認して子どもの預け先を選ぶのが大前提
新システムに反対するサイトの中には「きちんとした保育士資格がない保育ママを推奨している」との批判もあったが、筆者の住む世田谷区で保育ママを利用している友人は「とってもいいよ!」とべた誉めである(しかも複数の母親が)。確かに数年前、世田谷区の保育ママが預かり中に事故を起こしたことはあるが、「きちんとした保育士がいる」はずの区立の認可保育園でも死亡事故は発生している。また世田谷区には無認可保育所でも、保護者の評価が高い園も存在する。
要は、「保育ママだから」「認可だから」「無認可だから」「株式会社だから」と組織形態によって色眼鏡で見ないで、自分で情報を集め、自分の目で確認して子どもの預け先を選ぶのが大前提だということだ。
TPP論争と似たような構図
確かに株式会社の参入で保育が市場化してしまうのではないかと筆者も不安ではある。しかし、長年企業取材を続けてきた経験からいうと、世のため人のためにきちんと経営している企業も少なくない。逆に公立認可保育園の“(公務員的)融通のない対応”にがっかりしたこともある。この点についてはお互いのイイトコ取りをすればいいのではないか。そして監督する自治体が、保育所を運営する組織としてふさわしいかを、定期的かつ継続的に監査・評価することが必要だろう。そこにはもちろん保護者の評価も含まれるべきである。
「拙速な改革はいけないという意見もあるが、今日の実態を見れば待ったなし」という内容の、子育ての世界ではよく知られている有識者のコメントもあった。確かにその通りで、こちらとしては、とりあえず、早く“希望する保育園”に入りたい。
「われわれの広報のしかたもよくないのかも」とは前述の内閣府の担当者の弁で、これは賛成派と反対派に分かれて物議をかもしているTPPと似たような構図である。
(都市部の)待機児童をなくし、保育の質、子どもの健やかな育ちを確保するために本当に必要なのは何か――周囲に惑わされずに、真実は何かを自分で確かめて判断していきたいものである。
![]() | 江頭紀子 調査会社で情報誌作成に携わった後、シンクタンクにて経営・経済に関する情報収集、コーディネートを行いつつ広報誌も作成。現在は経営、人材、ISOなど産業界のトピックを中心に、子育て、食生活、町歩きなどのテーマで執筆活動。世田谷区在住、6歳1歳の二女の母。 |
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