窓の外は一面の銀世界。都心にもドカ雪が降った2月29日の朝、めったに見られない雪景色に娘は歓声をあげた。親としては慣れない雪道を登校することを心配もしたが、自分の子ども時代を思い出しながら、「学校では雪合戦したりして、おおはしゃぎなんだろうな」と、子どもたちの活き活きとした姿を想像して、なんだこちらまで楽しくなった。

が、帰宅した娘に「雪遊び楽しかった?」と聞くと、「校庭には出ちゃいけないんだよ」とそっけない返事。え?こんな日にこそ、外で遊ぶのでは……? 娘によると「校庭がぐちゃぐちゃになっちゃうからダメ」なんだそうだ。

yukiasobi
学校側の説明によると、それに加え、「水分をたくさん含む雪だったので、雪遊びをするとびしょびしょに濡れてしまう」ため、雪遊びはNGとしているのだという。さらに、「せめて靴下の替えでもないと、風邪でもひいてしまったら、それこそ保護者から苦情が来てしまうから」とのこと。

確かに自分が小学生の頃と違って教室に石油ストーブがあるわけでもなく、濡れた衣類を乾かす手段もないのだから、無理もないか……とある程度は納得しながらも、気になって区内の小学校の様子を調べてみた。各小学校のHPには、たいてい「学校日記」というコーナーがある。そこにその日の様子が綴られているのだ。

区内64校のうち、34校は雪の日についての記述はない。それどころか「毎日更新」と謳っておきながら更新が滞っている学校もある。

一方で中休みや昼休みに雪遊びをして、「心に残る1日になりました。」、「校庭には、雪だるまがたくさんできました。」、「ふわふわの雪でたくさん遊べて貴重な経験になりました。」と、雪遊びを楽しんだ様子を写真とともに紹介している小学校も8校あった。中には、各学級で時間を設定して雪遊びを楽しんだ学校もある。その際は、「いくつかの約束をして」と、ルールの下に遊んだことも書き添えている。

残りの学校は、単に雪が降っているという状況説明に終始していたり、雪遊びをよしとしたかわからない記述だったり。また、安全に登校するために教職員が雪かきをしたとアピール(?)をする学校や、「寄り道をしないでまっすぐ帰る」「むやみに雪合戦や雪投げをしない」など登下校時の注意を細かく列記している学校もあった。

周囲の人に聞いてみると、やはり答えは一様ではない。子どものときから「校庭での雪遊びは禁止されていた」人もいる。「雪合戦は石が混ざっている場合、危険だから」と、雪合戦禁止令が下されたこともあるとか。最近は放射能の影響を心配する声もあるようだ。

個人的には、「びしょびしょになる」ことを覚悟したうえで「石っころがはいらないように」雪玉をつくって雪合戦したりするのも、大げさだが「人生の体験の1つ」ではないか、と思う。

現場の教職員の身になれば、教室内がびしょびしょになったり、雪がとけたあとのグラウンド整備に手間がかかったり、保護者からのクレームがあるかもしれないと、マイナス要因があるのもわからなくはないが、これらはすべて、大人の都合ではないか。

めったに降らない大雪を素材に「雪ってこういうものなんだよ」と示すのも、ある意味教育だろう。雪によるプラスマイナスを考えながら、雪が降る地方に想いを馳せるなど、体感してこその学びもあるように思う。

校庭で雪遊びを堪能して心に残る1日となるのか、遊びたくても遊べなくて心に残る1日となるのか――わが子には前者であってほしかったものである。


江頭紀子江頭紀子
調査会社で情報誌作成に携わった後、シンクタンクにて経営・経済に関する情報収集、コーディネートを行いつつ広報誌も作成。現在は経営、人材、ISOなど産業界のトピックを中心に、子育て、食生活、町歩きなどのテーマで執筆活動。世田谷区在住、6歳1歳の二女の母。