150年以上の歴史を誇るアメリカの総合月刊誌「Atlantic」最新号に掲載されたコラム「Why women still can't have it all」

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(なぜ女性は、いまだ全てを手にすることができないのか)が、アメリカ国内で大きな注目を集めている。国務省で政策企画本部長を務め、現在はプリンストン大学で教鞭をとる2児の母、アン・マリー・スローター教授(53)が、「社会、経済構造が変わらない限り、アメリカで女性が仕事と育児を両立することは不可能」と言い切ってしまったからだ。
発表から一週間で16万人以上がFacebookで「いいね!」を押し、ウォールストールジャーナルやニューヨークタイムズなど伝統的なメディアもこぞって記事を取り上げるなど、アメリカがまた、女性の仕事と育児の両立問題に揺れている。

スローター教授は昨年、2009年から2年間務めた国務省有数の重要ポストを、「もっと家族と過ごす時間を持ちたい」という理由で辞職し、古巣のプリンストン大学の教授職に戻った。大学教授の仕事は、時間的融通がきくからだそうだ。アメリカの外交政策をつかさどる仕事はやりがいがあり好きだったけど、思春期の2人の息子の母として、ほとんど休みのない激務を続けることはできなかったと。そして彼女は、弁護士や投資銀行家、政府高官など、超エリートと呼ばれる類の仕事(往々にして超激務)を持つ女性が、「全て(キャリアと家庭)を手に入れることは不可能」と断定した。ちなみに彼女の夫は、やはり時間的融通のきく大学教授で、育児にとても協力的らしい。国務省時代の上司はヒラリー・クリントンで、「とても理解のある上司だった」とも述べている。にもかかわらず、である。

・キャリア、子ども、協力的な夫の全てを手に入れたアンタが言うな!

・若い女性のロールモデルであるべきあなたが言ったらおしまいでしょう。失望した。

・よく言ってくれた。仕事と家庭の両立なんて実際は無理なのに、できるできると幻想を押しつけるメディアにうんざりしてたところ。

・彼女のようなスーパーウーマンでさえ、私たちと同じ悩みを持っていると分かってうれしい。

・欲張りすぎ。どこまで求めれば気が済むの?

これらはネット上に寄せられた読者からのリアクションの一部。彼女自身も記事中で認めていることだが、彼女はアメリカ社会のトップ中のトップで、非常に恵まれた存在。ものすごく高いレベルでのキャリアと子育ての両立を模索しているわけで、ここで彼女が論じている問題は、その日の暮らしに追われるシングルマザーや、高額なシッター代の支払いに頭を悩ませるごく一般的な共働き家庭のそれとは違う。にもかかわらず、彼女のコラムがこれほどまでに広く読まれ、様々な反応を引き出しているということは、「仕事と育児の両立」がアメリカで、女性にとっても男性にとっても、終わりのない永遠のテーマだからだろう。