南アフリカのジェイコブ・ズマ大統領が先日、テレビ番組のインタビューで「女性が結婚しないことは好ましくなく、子どもを産み母になることは女性にさらなる訓練を与えるので重要だ」と発言。おりしも南アフリカの8月は、女性の地位向上と権利拡張のための“女性月間”であり、時代錯誤の女性蔑視発言に国内で怒りの声が上がっている。


(photo by World Economic Forum

南ア最大の民族集団であるズールー族出身で、部族の伝統である一夫多妻主義を維持し、4人の妻と約20人の子ども(まだ隠し子がいるというのが定説)を持つズマ大統領。これまでにもたびたび、女性軽視発言が物議を醸してきたが、最新の失言は、自宅で行われたインタビューでのこと。
近々結婚する娘の一人について尋ねられ、「娘たちには独身でいてもらいたくない。なぜなら女性が独身でいることは社会にとって問題だからだ。最近の人々は独身でいることは良いことだと考えているが、それは間違いで社会のねじれだ。子どもを産まなければいけない。子どもを産み母になることは女性にさらなる訓練を与えるので、重要だ」と発言。

あたかも、子どもを産まない女性は一人前でないという発言に、南アの女性たちが猛反発。男女平等社会を訴える団体は、「女性=母親であり、子どものいない女性が劣っているという認識は大問題。子どものいない男性に対して、ズマ大統領は男性として劣っていると言うのだろうか?」とコメント。

有名人たちも次々とTwitterやFacebookで声を挙げた。
「大統領が、結婚して子どもを作れって。良い訓練だからだって。……無理!」
「大統領がたくさんの女性に子どもを産ませてる意味がやっと理解できたわ。彼は女性たちに訓練を与えているのね」
「最高の女性月間をありがとう!」

大統領のスポークスマンが慌てて、「大統領はより強固な家庭を築くことはより良いコミュニティーの建設につながり、それが今日の我々が抱えている様々な問題の解決につながると信じている」と釈明(←釈明になってない?!)するはめに。

ズマ大統領は、子どもを産まない女性について発言する前に、より深刻な社会問題になっている父親の家庭内暴力や家庭放棄について考えてみる必要があるのではないだろうか。


恩田 和(Nagomi Onda)恩田 和(Nagomi Onda)
全国紙記者、アメリカ大学院留学、鉄道会社広報を経て、2010年に長女を出産。国内外の出産、育児、教育分野の取材を主に手掛ける。2012年5月より南アフリカのヨハネスブルグに在住。アフリカで子育て、取材活動を満喫します!