子どもの頃、関西圏の新興住宅地に住んでいた。
第2次ベビーブーマーである私の周りには、やたら子どもが多かった。

幼稚園や小学校から帰ると、自然と空き地に集まる。

「○○ちゃんのお兄ちゃん」が今日の遊びを決める。
彼は、小学4年生ぐらいだったろうか。

「“けいどろ”やるぞーー!」

空き地とその隣にある団地の3次元を縦横無尽に、隠れ、走り、追いかけ、追いつかれた。あの頃、日が暮れるのはなんて早かったんだろう。

ネットで「第11回柏崎どろけい大会」の文字を見かけて、そんな記憶がよみがえった。

過去の開催履歴には、海を背景にして駆け回る子ども、そして大人たち。

他にも「けいどろ大会」「どろけい大会」を開催している団体がある。「どろじゅん(泥棒と巡査)」「じゅんどろ」など、もろもろ呼称に差はあるらしい。45歳の夫に尋ねると「『泥棒と探偵』やろ」とまんまな名前で返ってきた。今回は「どろけい」で統一するが、あの鬼ごっこが今や「非日常イベント」として展開されている。

現代っ子・ミーツ・どろけい。
親として、そしてかつての子どもとして混ざってみたい!

そう思ったが、あまりにも柏崎は遠い。
 
開催者である「運動あそび塾しらさん家」の笹川陽介さんに、当日レポートとインタビューをいただいた。

あの頃、「どろけい」が育ててくれたもの


9月16日、日曜日の朝。暑いぐらいの快晴。子どもたちと親、運動あそび塾のスタッフたちが集合場所にやってくる。運動あそび塾に通っている子だけでなく、当日参加で初対面の子もいる。通う学校、学年はバラバラだ。つまり「コミュニケーション能力」が冒頭からいきなり問われる。もじもじする子を、親が後押しする場面も見られる。

ルールはアレンジが加えてあり、泥棒チームには「宝」としてボールを5つ与えられる。1人の泥棒が持てるボールは1つ。チーム内での宝の受け渡しは可能。

泥棒は「宝を持って警察から逃げ切る」、警察は「宝を持っている泥棒を捕まえて、牢屋へ連行する」ことを目指す。警察につかまっても、牢屋の外から泥棒仲間がタッチすると脱走できる。制限時間は15分(季節によって変動)。
 
終了時に3人以上の泥棒が牢屋に入っていれば、警察の勝ち。2人以下なら泥棒の勝ち。

このルールがあることで、子どもたちは「チームプレー」を強く意識する。


(まずは作戦会議。宝であるボールを誰が持って逃げるか、できるだけ子ども主体で話し合う)


スタートすると、子どもたちはそれぞれの能力に応じた動きを見せる。走って逃げまくるタイプの子、隠れ場所を見つけて移動しながら潜んでいる子。

笹川さんによると、「どろけい」は単純な競争よりも複合的な効果が高いという。

「体力面では、前後左右への複雑な動きを自然と身につけられます。全力ダッシュの繰りかえしや、段差のある場所なら上り下りが加わる。心拍数の上下による、持久力を養う効果も高いんです」


(チームプレーも「どろけい」の魅力。宝と時間制限、泥棒と警察を分ける目印はあった方がわかりやすい)


――― へとへとになりながらも、近づいて来た警察に気づいて慌ててダッシュする。今やったら確実に管理組合に通報されるだろうが、団地の階段を上下して逃げる泥棒を追いかけ回した。あれが持久力を育てていたのか。 ―――

「次に洞察力ですね。相手の動きを想像する、予測する力が勝敗を左右します。小さな子でも『一度も見つからなかった~』と自慢げに出てくる子がいる。初回はあっさり捕まった子でも、次からは工夫を重ねていくので、だんだんと知恵が回るようになります」


(いい隠れ場所を見つけるのも、潜む相手を見つけるのも能力のうち。小さな子は隠れるのがうまい)


親から子へ、「伝承遊び」としての「どろけい」


「そして、社会性の発達に効果が高い。誰に強制されるでもなく、仲間と『あっちに逃げろ!』『宝を受け取って!』と大声で叫び、笑いあい、時にケンカをもする。あと、大人のやり方を見て子どもなりに『ああやって逃げればいいのか』と技を盗む効果もありますね。大人はムキになってやってるだけなんですが、思いがけず『遊びの伝承』の機会になっています」


(大人も子どもも汗だくで走り回る。警察に追われているスリリングな状況でも、思わず笑顔だ)


笹川さんが「どろけい大会」を続ける理由は、子どもの成長以外にもう1つある。
それは、「元気に走り回る子どもたちを、近所の人たちが見守る地域になってほしい」という願い。

「写真だけ見ると自由に遊べる場所に見えますが、事前申請をしなければ使えません。地方だからと言って場所があるわけではないんです。また、安全確保のための下見は必須ですし、危険箇所があれば対策も必要です。『どろけい』が日常の遊びになるのが理想ですが、そのためにもこういった大会をあちこちで開いてもらいたいですね」

そうそう、と笹川さんは付け足した。

「子どもたちに教えてもらったんですけど、テレビ番組の『逃走中』ってありますよね。あの影響で勝手に『ハンターが来た!』なんて子どもたちは言ってますんで、現代っ子バージョンに変えてやるとウケがいいかもしれません」

かつての「どろけい」派も「けいどろ」派も「どろじゅん」派も立ち上がる時が来た!
体力も洞察力もコミュニケーション能力もいっぺんに育つんですってよ奥様!

……と、まるでテレビショッピングのMCみたいになってしまったが、「鬼ごっこもできない世の中ガー」「少子化ガー」とガーガーわめいていても仕方ない。

2~3家族集まればすぐできる。

「“けいどろ”やるぞーーーーー!」

運動あそび塾・しらさん家
http://www.warakashi.net/


山口照美山口照美
広報代行会社(資)企画屋プレス代表。ライター。塾講師のキャリアを活かしたビジネスセミナーや教育講演も行う。妻が家計の9割を担い、夫が家事育児をメインで担う逆転夫婦。いずれ「よくある夫婦の形」になることを願っている。著書に『企画のネタ帳』『コピー力養成講座』など。長女4歳・長男0歳(2012年現在)