インド・ムンバイにある幼稚園の2-3歳児クラスをのぞいてみて、ふと気付いた日本との大きな違い。これはインド式算数の根本ともいえる、数字の数え方でした。

子どもたちは英語で数字(数え方)を勉強していたのですが、なんと1~12まで数えているのです。日本だと1から10が普通ですが、インドでは最初に覚える数字が、ナント「12」までなのです。
なぜ10ではなく12?
中途半端な数字と思いきや、良く考えてみると、時計も12時まで、1年も12ヵ月。身の回りに意外と多い「12」の数字。小さなうちから12まで教えるのは、理にかなっているのかもしれません。

ほかにも考えてみると、ヨガでも、私が習っている流派では、メインの「太陽礼拝」という一連の流れは12個の動きでひとつですし、ほかでもポーズを12秒間や12回まで数えることが多く、主なポーズ(アサナ:インドではアソンと呼ぶ)の種類が12種類。

毎回「12までは数えにくいな」と思っていたら、先生がインド式数え方を教えてくれました。手をだして、親指をつかい、各指の関節を数えていくと12だと言うのです。人差し指の第一関節、第二関節、指の付け根……と指にある線を親指でタッチしながら数えていくと、たしかに12。インドすごい!


幼稚園の先生に尋ねたところ、「子どもはまず1から12までを覚えるべきでしょう?」と何も疑問に思っていないよう。


インドだけではなく、私たちの周りには、いろいろ12にまつわるものがあることに気がつきました。12星座、十二支、そしてピアノのドからシまでも黒鍵を数えると12音。

さらに、私たちが「充分に足りている」ことを表現するときも「十二分(じゅうにぶん)にある」という言葉を使う。ここにも12があった!

日本では数年前からインド式算数が話題になっているようだけれど、インド人に聞いてもとかく何かが変わっているとは思えず、実際私は計算に早いインド人にあったことがないのです。

それどころか、7×8をわざわざ分解して、5×8+2×8で40+16=56と導くインド人に出会った時はびっくりしました。「しち・は・56」と暗記している私に比べて、この計算方法はそんなに早いとは言えない。

でも、数字の概念や応用性は多分に持っていると感じるのです。掛け算をそのように分解してしまい、果たして合っているのか考えてしまう日本人の私と比べ、数字を計算しやすいように並び変えるインド人はすごいと感心します。

インド人が12という数字を好むのは、2でも3でも4でも6でも割れる数字であることにも由来しているのかもしれません。改めて12という数字を考えてみると、いろいろなところに12の倍数が潜んでいることにも気づきます。60分、除夜の鐘108つ……些細な数字まで12に関係あるのではないかと思ってしまうくらい。

あらためて子どもといっしょに身近な12を発見してみると、数字遊びから、本当に数学に強い子どもになるかもしれません。数学に強いインドの数え方もマスターしてみたいものです。


川口 由美子川口 由美子
ライター、管理栄養士。著書「アレルギーっ子の簡単毎日レシピ100(青春出版社)」の他、雑誌やWEBで離乳食や幼児食などの家庭的レシピを紹介。All About「離乳食」等ガイド。夫の転勤に伴いアジアを転々としながら現地人に根付くアーユルベーダや漢方などを学ぶ。個人事務所「Food-Medi」を運営。8歳娘と2歳息子の母。