毎年恒例、息子が心待ちにしている地域のフリーマーケットの日がやってきた。なぜ息子が楽しみにするかといえば、このフリーマーケットはおもちゃが出ている率が高いから。そして、この日だけは、普段決して買ってくれない母が、どうした訳かおもちゃを買ってくれるから。


怪獣一体100円だ!フリーマーケット独特の爽快感


今回はウルトラマンの怪獣人形を目指していざ出発。幸運にも欲しいと思っていた正にその怪獣を発見。これはラッキー、すごい確率だ。

怪獣のソフトビニール人形は定価で買えば、一体840円もする。今回フリーマーケットで見つけたのは一体100円。中古でも十分きれいだ。去年は憧れの大型レスキュー車両がミニカー3つ付きで300円。使い込んだ感じがあっても子どもは気にしないし、機能に問題は無く、今でも大のお気に入りだ。もう売っていない昔のヒーローのおもちゃを見つけて大興奮したこともある。

母の財布には優しく、子どもは大喜び。あぁ有難い。

そしてなんだか妙に爽快だ。誕生日に新品のおもちゃに囲まれた息子を見る時のほのかな罪悪感が無い。なぜだろう。

おもちゃの寿命は短い


特別な時しか買わない、大きい物は買わない…そんな原則を掲げても、おもちゃは増える。そして、その寿命は悲しいほど短い。壊れるのではなく、子どもの興味がなくなるペースが早いのだ。このスピードに大人の感覚はついていけない。気分的にも、金銭的にも。

だからといって、応用力の高い長く使える「良品」ばかりを選んで与えればいいかといえば、それだけじゃやっぱり子どもはつまらない。明らかにかっこいい、テレビで見たおもちゃ然としたものだって欲しいのだ。それに乳幼児期は、運動能力や理解力の発達に伴い、興味を持つおもちゃが変わっていくのは自然なことだ。

処分する心のハードル


おもちゃの収納には限界があるから減らしたいけれど、使った期間と買った金額を思うと、捨てるのはなかなか難しい。ひとりっ子だと、自分の子どもが使うのも一代限りで、「下の子も使ったし」という状況すら生まれないのだ。

その点、フリーマーケットで買ったものとなると、前に使っていた人がいるから総じて使用期間は長いことになるし、お金もあまりかけていないから、処分する時の心のハードルが低くてすむ。最近処分した三輪車は、お下がりのお下がりだったので息子で3人目。もう、よく頑張った!と感謝の気持ちで送り出せた。

そうだ、あの、新品のおもちゃに付随するほのかな罪悪感は、「物の寿命」の前に「興味の寿命」が来てしまうことが最初からわかっているからなんだ。

寿命を共有する感覚


「物の寿命」に「興味の寿命」が追いつかないのが現実。ならば「物の寿命」をシェアすればいい。フリーマーケットで子どもが好きなおもちゃを選ぶだけで、物に新たな「興味の寿命」が付与される。親が支払う小額の対価は、子どもの「興味の寿命」の短さに見合っていてちょうどいい。

爽快感の理由はこの辺にありそうだ。

物の寿命を延ばせた上に、みんなちょっとずつ得していい気分。捨てないで済んだ人も、安く買えた人も、おもちゃが増えた子どもも。

安く手に入れ、積極的に手放す……そうやって物の寿命を共有する流れに乗ることも、物を大切にすることになるはずだ。

積極的に手放す


よし、私も寿命共有の流れに物を乗せる側にまわってみよう。

「誰かに使ってもらう」を基準に、息子ともう使わないおもちゃを選んでみたら、紙袋2つがいっぱいになった。これを、別の地域イベントで開催されたおもちゃ交換コーナーに持参。これは持ち込んだおもちゃに応じてポイントをもらい、そのポイントで別のおもちゃを選べる、というシステム。

これで、捨てたくない気持ちも収納スペースもだいぶすっきりした。他にも寄付やフリーマーケットに出店するなど方法はある。寿命を保ちながら積極的に手放せる道を持っておくと安心だ。

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さて、怪獣発見に始まり、フリーマーケット独特の宝探し的な空気に高揚気味の息子。もうこれで最後だからね、と私からの購入打ち止め宣言の後に「もっと欲しいもの」を見つけてしまった。あぁ、やっぱり大泣き?でもね、だからってダメなんだよ、上限は必要。

さんざん泣いて発散したのを見計らって、最後に出店のチョコバナナ150円。本当はこのチョコバナナ2本でさっきの「もっと欲しいもの」が買えるんだけどね…。まぁ、これが親のけじめ。来年また来ようね。


狩野さやか狩野さやか
ウェブデザイナー、イラストレーター。企業や個人のサイト制作を幅広く手がける。子育てがきっかけで、子どもの発達や技能の獲得について強い興味を持ち、活動の場を広げつつある。2006年生まれの息子と夫の3人家族で東京に暮らす。リトミック研究センター認定指導者。