南アフリカに来て驚いたのが、子どもの数の多さ。経済発展に伴い、特に都市部では非婚・晩婚化現象も見られてはいるものの、女性一人当たりの平均出産人数を示す出生率は、2.46と、日本の1.39(いずれも2010年、世界銀行のデータ)と比較すると依然として高い水準を保っている。

そんな南アでよく見かけるのが、この、アフリカ流おんぶ育児。古今東西、おんぶの仕方、使う布は様々だが、南ア人のおんぶは極めてシンプル。まだ首も据わっていない新生児でさえ、大判のバスタオルやブランケット一枚ですっぽりと包みこみ、自由になった両手で家事をしたり仕事をしたり。

同じ南ア人でも、白人女性はもっぱらマクラーレンなどのベビーカーに子どもを乗せて移動しているが、黒人女性は、エルゴのような値の張る抱っこひもにもベビーカーにも一切頼らない(大体、マクラーレンのベビーカーなんて、彼女たちがフルタイムで働いて手にする月給2ヵ月分ぐらいする)。

ただ、バスタオルで赤ちゃんを包み、腰回りに巻き付け、胸の上とお腹のあたりの上下2か所で、タオルの端を折り込むだけ。手軽かつ、赤ちゃんにとってもママと密着するのが心地よいのか、たいていママの背中でスヤスヤ眠っている。体ごと包んでしまうので、赤ちゃんが手足をばたつかせることもなく、落ちたりどこかにぶつけたりという心配も少なさそう。

でもこれができるのは、やっぱり黒人女性ならではの恵まれた豊かな体型だからこそ。きゅっとせり出したヒップは、さながら天然の椅子のようで、赤ちゃんをしっかりホールド。豊満なバストで、布がずり落ちるのを防いでいるというわけ。

筆者がグズる娘を片手に抱いて用事を済ませようとしていたら、20年以上日本人家庭で働いてきた我が家のベテランメイドさんが「どうして日本人はおんぶしないの?」と言って、長~い腕でひょいっと娘を背中にまわし、ソファーに置いてあったブランケットでくるっと巻いておんぶしてしまったことがある。一瞬の出来事に娘はキョトンとしたものの、気持ちいいのか黙って彼女の背中で揺られていた。ならばと筆者もトライしてみたが、とてもとても、ザ・日本人な筆者の体型では真似のできない芸当でした。

日本でも、かつてはおんぶ紐で子どもをおぶって畑仕事や家事をするのが当たり前だった時代もあった。胸の前でクロスする旧タイプのおんぶ紐が恥ずかしいというママさん、自然育児回帰の一環で、最近は日本でも一枚布で簡単に実践できるおんぶ育児が注目されているようですよ。ママと赤ちゃんがぴったり密着し、お互いの体温を感じつつママの両手が自由になるおんぶの良さ、また見直されるといいなと願わずにはいられません。

South African Lady Shares How to Securely Wrap Baby on Your Back (http://youtu.be/rQ6h64S-oto)

恩田 和(Nagomi Onda)恩田 和(Nagomi Onda)
全国紙記者、アメリカ大学院留学、鉄道会社広報を経て、2010年に長女を出産。国内外の出産、育児、教育分野の取材を主に手掛ける。2012年5月より南アフリカのヨハネスブルグに在住。アフリカで子育て、取材活動を満喫します!