筆者が子育て関連の取材、執筆をしていていつも感じるのは、この分野での男性ライターの少なさである。妊娠・出産・子育ては女性目線、母親目線で語られることがほとんどで、男性目線、父親目線が圧倒的に不足していると思う。
(ちなみに国内外、バラエティに富んだ書き手がそろった当サイトのライター陣でさえ、編集長を除いて全員女性だ)

そんななか、アメリカの有力紙ニューヨークタイムズが運営する育児ブログ「Motherlode(
http://parenting.blogs.nytimes.com/)」(タイトルが示す通り、母親たる書き手がほとんどなのだけど)に先月と今月、2人の男性ライターが興味深いコラムを寄せているのが目についた。

そのひとつが、“Am I a ‘Working Dad’?(=俺って働くパパなのかな?)”というエントリー。
(http://parenting.blogs.nytimes.com/2012/10/19/am-i-a-working-dad/)
9歳と7歳の2児の父親であるライターが、'working mom'という言葉があるのに、どうして誰も自分のことを'working dad'と呼んでくれないのかと疑問を呈している。

このお父さん、朝5時に起きて夜10時に寝るまで、“働くママ”の妻と二人で、朝食の支度、ゴミ出し、皿洗い、洗濯→通勤→仕事→帰宅→夕食→習い事の送迎、宿題を見る、子どもと遊ぶ、風呂に入れる、就寝前の読み聞かせ、を息つく暇もなくこなすという。仕事も父親業も同じように大事に考えているのに、誰も自分を、そしてその他大勢の父親を、“働くパパ”と呼ばないのはおかしいのではないかというのだ。

“働くママ”という言葉が、複数の職務を同時にこなすスーパーヒーローを意味し、職場での仕事も家庭での家事・育児も、彼女のすることはなんでも'job'とされるのなら、同じことをしている働くパパも、もっと世間からリスペクトされてもいいのではないかと。

このコラムには200件以上のコメントがつき、男性も女性もほとんどが賛成の意を表明している。

たしかに、アメリカでも日本でも、専業主夫はまだまだ一般的でなく、男性が外で働くことをごく普通のことと捉えがちな現状。仕事と父親業を両立しているという意味で、“働くパパ”という単語を使ったこともなかったけれど、夫婦ともに仕事を持ち、家事や育児を分担することが当たり前になりつつある現代アメリカでは(もしかしたら日本でも)、仕事と育児の両立は母親だけの問題でなく、'working mom'という単語も、早晩、時代遅れになっていくのかもしれない。

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もうひとつのコラムは、“I Hate Being Called a Good Dad(=いいパパって呼ばないで)”というエントリーだ。
(http://parenting.blogs.nytimes.com/2012/11/09/i-hate-being-called-a-good-dad/)
こちらは、3歳と1歳の子どもを持つパパライターが、自分のことを'Good Dad(=いいパパ)'と呼んでくれるなと訴えた。

1人で子ども2人を連れて大型スーパーに買い物に出かけ、子どもを乗せるショッピングカートを念入りにウェットティッシュで消毒する著者を見て、年配女性がほほ笑みながら、「いいパパね」と声をかけてきた。

言った方には何の悪気もないのは分かるが、同じことを母親がしても、わざわざ「いいママね」なんて言わないだろう。そもそも“いいパパ”という言葉の裏には、男は母親に比べて子育てしない、得意じゃないという既成概念があるのではないかというのだ。

父親たちは、別に周囲からのフィードバックは求めていないというのが、この著者の主張である。父親だろうが母親だろうが、いい親はいい親であって、公平に扱ってほしいと。

これも、なるほど、一理あり。

だいたい、“イクメン”という言葉自体、「元来、男は育児しなかった」という発想から生まれたものだろうし。“働くママ”とか、“いいパパ”とか、“イクメン”なんていう言葉に縛られているうちは、ママにとってもパパにとっても、働きやすく、子育てしやすい社会の実現は難しいのかもしれない。


恩田 和(Nagomi Onda)恩田 和(Nagomi Onda)
全国紙記者、アメリカ大学院留学、鉄道会社広報を経て、2010年に長女を出産。国内外の出産、育児、教育分野の取材を主に手掛ける。2012年5月より南アフリカのヨハネスブルグに在住。アフリカで子育て、取材活動を満喫します!