「じゃあこれをお願いします。」
「こちら、お車ついておりませんがよろしいでしょうか?」
「……。」
「ですから、こちら、小さなお車で遊んで頂くようになっているんですが、お車は入っていないんですね。プレゼントでしたらこのようなお車のセットもご一緒にされると喜ばれるかと思いますが。」
「とりあえずこっちだけ買って聞いてみます。」
デパートのおもちゃ売り場で、メモを手にしたおじいちゃん。ミニカーセットは付けずに、孫に頼まれたであろう商品だけを購入して去って行った。「祖父母層にはどんどん買わせちゃおう!」という気満々の店員さんに屈しないおじいちゃんの態度に心で拍手。
12月に入ると、デパートのおもちゃ売り場は、孫に頼まれたものを探す祖父母世代、サンタクロースにお願いするものを「下見」する親子で賑わう。今やおもちゃも量販店で定価より相当安く買えることを親たちは知っている。
デパートは、定価で買ってくれる祖父母層に期待をかけるから、店員さんが、同梱されていない人形や車、ちょっと高級な電池をついでに購入させたくなる気持ちも、まぁわかる。
うちも、所用ついでにデパートでサンタさんにお願いするおもちゃをチェック。既に決めていた憧れの商品のサンプルを触って感激する息子の横で、ふと値札に目をやり驚いた。量販店の広告で見た金額より2000円以上高い!おぉ、これが定価の世界か……。

「こちら、お車ついておりませんがよろしいでしょうか?」
「……。」
「ですから、こちら、小さなお車で遊んで頂くようになっているんですが、お車は入っていないんですね。プレゼントでしたらこのようなお車のセットもご一緒にされると喜ばれるかと思いますが。」
「とりあえずこっちだけ買って聞いてみます。」
デパートのおもちゃ売り場で、メモを手にしたおじいちゃん。ミニカーセットは付けずに、孫に頼まれたであろう商品だけを購入して去って行った。「祖父母層にはどんどん買わせちゃおう!」という気満々の店員さんに屈しないおじいちゃんの態度に心で拍手。
デパートの現実
12月に入ると、デパートのおもちゃ売り場は、孫に頼まれたものを探す祖父母世代、サンタクロースにお願いするものを「下見」する親子で賑わう。今やおもちゃも量販店で定価より相当安く買えることを親たちは知っている。
デパートは、定価で買ってくれる祖父母層に期待をかけるから、店員さんが、同梱されていない人形や車、ちょっと高級な電池をついでに購入させたくなる気持ちも、まぁわかる。
うちも、所用ついでにデパートでサンタさんにお願いするおもちゃをチェック。既に決めていた憧れの商品のサンプルを触って感激する息子の横で、ふと値札に目をやり驚いた。量販店の広告で見た金額より2000円以上高い!おぉ、これが定価の世界か……。

我が家のクリスマスは、親からのプレゼントは無し。サンタクロースが、お願いしたものを「きっと」プレゼントしてくれることになっている。とはいえ、『大きすぎる』『同様のものを既に持っている』『高すぎる』ものはサンタさんにお願いしないようさりげなく誘導してきた。今回の希望の品は、量販店の広告で見たあの値段ならば許容範囲、と判断。しかし、定価となると、これは確実に『高すぎる』に抵触する。
一抹の不安を覚え、その夜急遽ネットで調べると、売り切れ表示続出。まだ買えるところはすべて定価レベルに値段がはね上がっている。インターネットで簡単に値段が比較出来る恩恵を受けたのは消費者だけではなく、販売側もだ。品薄と見れば、明らかに値段が上がり始める。
甘かった。過去、それほどメジャーなものを息子が欲しがらなかったから経験不足。今回の希望の品、そんなに人気商品だったとは。
広告の出ていた最寄りの量販店の閉店間近、慌てて電話をしたら「店頭在庫残り2点となっております。」「あの、取り置きは……?」「この時期、店頭のお客様優先でして。」
多分、クリスマスまでに、再入荷があるはずだ。しかし、確実とはいえない。サンタクロースが「売り切れで」と言い訳するわけにはいかない。そもそも、絵本によれば彼らはおもちゃを買うのではなく「おもちゃの実」から取り出しているんだった。
日頃は、おもちゃ過多を苦々しく思っているものの、サンタクロースだけは別格。子ども時代のごく数年感のうきうきした幻想を演出するために、彼だけは、子どもがお願いしたものを魔法のようにそっと届けてくれる不思議な存在であってほしい。
途端に全ての販売業者の顔が意地悪くゆがんで見え始める。それが商売、当然といえば当然だ。でも、「かわいいお子さまのためなら高くても買いますよね~。」と見透かし「親バカ」を笑っている気がしてくる。どうせ買わざるをえないよね、というその態度、なんだか妙に腹が立ってきた。よし、意地でも定価で買ってなるものか。
広告の量販店に目標を定めた。在庫2点、すべての予定を調整し、翌日1時間を確保。最短コースで行くために、雨の中レインコートに身を包み自転車を走らせる。あった! 棚には最後の1点。サンタクロースよ、あなたの面目はこれで保った。
かくして12月の初旬に早々と購入されたサンタからの贈り物が、クローゼットの奥深くで今も息をひそめる。
さて、その商品、今ネットで改めて検索したら、あぁやっぱり。商品が補充されたのか、定価以下のまともな値段で落ち着いている。先日の広告並みの値段もちらほら。しかし同時に、既に定価2000円越えの値段をつけている業者も!それはいくらなんでもやりすぎだ。
あぁ、結局はこんな業者の価格合戦に巻き込まれているという事実。大人としては情けない。定価に屈しない意地は見せつつも、実際にはあたふたと完全にクリスマス商戦に巻き込まれている。
クリスマス前の品切れ危機や価格高騰を避けるには、11月からサンタクロースにお願いしなければならなくなってしまう。それじゃぁ盛り上がらないし、移り気な子どもの「希望変更」も心配だ。子どもの気持ちは「前倒し」や「早割り」に対応していない。
よし、ルール追加。来年からは『人気商品』をお願いしそうになったらそれとなく違う方向へ誘導してみよう。
さて、親の誘導に応じなくなる日が先か、サンタクロースを信じなくなる日が先か。
ネットの現実
一抹の不安を覚え、その夜急遽ネットで調べると、売り切れ表示続出。まだ買えるところはすべて定価レベルに値段がはね上がっている。インターネットで簡単に値段が比較出来る恩恵を受けたのは消費者だけではなく、販売側もだ。品薄と見れば、明らかに値段が上がり始める。
甘かった。過去、それほどメジャーなものを息子が欲しがらなかったから経験不足。今回の希望の品、そんなに人気商品だったとは。
広告の出ていた最寄りの量販店の閉店間近、慌てて電話をしたら「店頭在庫残り2点となっております。」「あの、取り置きは……?」「この時期、店頭のお客様優先でして。」
多分、クリスマスまでに、再入荷があるはずだ。しかし、確実とはいえない。サンタクロースが「売り切れで」と言い訳するわけにはいかない。そもそも、絵本によれば彼らはおもちゃを買うのではなく「おもちゃの実」から取り出しているんだった。
サンタの面目、親の意地
日頃は、おもちゃ過多を苦々しく思っているものの、サンタクロースだけは別格。子ども時代のごく数年感のうきうきした幻想を演出するために、彼だけは、子どもがお願いしたものを魔法のようにそっと届けてくれる不思議な存在であってほしい。
途端に全ての販売業者の顔が意地悪くゆがんで見え始める。それが商売、当然といえば当然だ。でも、「かわいいお子さまのためなら高くても買いますよね~。」と見透かし「親バカ」を笑っている気がしてくる。どうせ買わざるをえないよね、というその態度、なんだか妙に腹が立ってきた。よし、意地でも定価で買ってなるものか。
広告の量販店に目標を定めた。在庫2点、すべての予定を調整し、翌日1時間を確保。最短コースで行くために、雨の中レインコートに身を包み自転車を走らせる。あった! 棚には最後の1点。サンタクロースよ、あなたの面目はこれで保った。
かくして12月の初旬に早々と購入されたサンタからの贈り物が、クローゼットの奥深くで今も息をひそめる。
価格合戦に巻き込まれている現実
さて、その商品、今ネットで改めて検索したら、あぁやっぱり。商品が補充されたのか、定価以下のまともな値段で落ち着いている。先日の広告並みの値段もちらほら。しかし同時に、既に定価2000円越えの値段をつけている業者も!それはいくらなんでもやりすぎだ。
あぁ、結局はこんな業者の価格合戦に巻き込まれているという事実。大人としては情けない。定価に屈しない意地は見せつつも、実際にはあたふたと完全にクリスマス商戦に巻き込まれている。
クリスマス前の品切れ危機や価格高騰を避けるには、11月からサンタクロースにお願いしなければならなくなってしまう。それじゃぁ盛り上がらないし、移り気な子どもの「希望変更」も心配だ。子どもの気持ちは「前倒し」や「早割り」に対応していない。
よし、ルール追加。来年からは『人気商品』をお願いしそうになったらそれとなく違う方向へ誘導してみよう。
さて、親の誘導に応じなくなる日が先か、サンタクロースを信じなくなる日が先か。
![]() | 狩野さやか ウェブデザイナー、イラストレーター。企業や個人のサイト制作を幅広く手がける。子育てがきっかけで、子どもの発達や技能の獲得について強い興味を持ち、活動の場を広げつつある。2006年生まれの息子と夫の3人家族で東京に暮らす。リトミック研究センター認定指導者。 |
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