「来年度の役員決めどうする?」12月なのに、もうそんな声を聞いた。だいたいこの手の話は「いかに逃げるか」というマイナスの話題に発展しがちだ。PTAの役員は「なんだか面倒で大変そう」というイメージが根強い。

息子が幼稚園に通って3年、役員ではないけれど、結局毎年何かしら係をやってきた。各学年1クラス、園児の少ない園なので親の数も少ない。その割にPTAの仕事量は多いから皆で分担することになる。


実際やってみると、それほど「嫌」なものでもない。

ただ、確かにPTA独特の陥りやすいパターンがあるのもよくわかった。あの根強いマイナスイメージの源泉はその辺にありそうだ。ちょっとの工夫と意識次第で、PTA仕事は少し快適になるはずだ。

全力投球しない


まずはじめに「全力でがんばりすぎない」を肝に命じる。 PTAの仕事で自分の生活を浸食してはいけない。義務感や契約ではなく、サービス精神や使命感が原動力になると、まじめな人ほどむしろ頑張りすぎて仕事を増やしてしまう。

毎年誰かが引き継ぐ仕事だ。仕事量が膨らめば、なり手は減る一方。全力疾走するパワーがあるなら、むしろどうやったら業務を簡略化できるかを考えて制度を改革していった方がいい。

時簡は貴重! ~コスト意識をもつ~


ある時間はすべて使う……、もともと専業主婦が多い幼稚園のPTAはこれに陥りやすい。これで「役員はいつも幼稚園にいて忙しそう」のイメージが定着する。「話し合い」と称して集まれば、雑談から始まってどこから大切な話が始まってどこで終わったのか、境界不明瞭。これはいけない。

せっかく幼稚園の保育中、子どもがいない時間はものすごく貴重だ。私は自分が忙しいときは本気で5分とか10分の単位で惜しい。だらだらっと雑談まじりに話し合っていたら、1時間なんて一瞬だ。

仮に区の一時保育に子どもを1時間預けたら950円。話し合いの1時間を、果たして950円分の緊張感をもって使っているだろうか。

例えば「話し合いは1時間以内」「集まる回数は週に1回が上限」等の原則を決めておくと、無理ない仕事量に抑制する効果があるし、集中力が上がって無駄が省きやすくなる。

ひとりで抱え込まない ~子どもは風邪をひく~


責任感のある人がひとりで仕事を抱え込むのも、いけない。子どもは必ず風邪をひき、母にもうつる。ずっと仕切っていた人が、行事の当日、子どもの熱で来られないなんていうことは、実はよくあることだ。インフルエンザが流行れば冬の間業務が進まないレベルに陥る。

誰にでも起こりうる仕方ないことで、お互いさま。だから業務はオープンにし、普段から代替がきくようにしておくのが重要だ。ひとりに負担を集中させない工夫にもなる。

マニュアル化の落とし穴 ~引き継ぎはシンプルに~


PTA仕事は1年ごとに担当者が変わるから、マニュアルや資料が必要だ。無かったら確かに困る。しかし、実は問題なのはマニュアルが詳細すぎるケースなのだ。

電化製品に分厚いマニュアルがついていると使う前からため息が出る。あの効果。やる前から仕事が「大変そう」に見えると、PTA仕事としては大いにマイナスポイントだ。

壮大なマニュアルに出会ったら、それは前年度の「記録」であって「マニュアル」ではないと割り切ってみると楽になる。やるべきことはたいていシンプルだ。最低ラインだけを把握し、自分たちのやりやすい方法で実行すればいい。

マニュアルを残す時は、タスクリスト程度にとどめる。やるべき項目と期限をリストアップし、箇条書きで示せばA4用紙1枚でおさまる。それに過去の参考資料だけあれば、具体的なやり方は次の担当者に任せればいい。

レベルは上がりやすく下げにくい ~毎年リセットする勇気~


行事でも制作物でも、その年のメンバーによって内容や凝り方が変わるのは当然だ。たまたま特定の分野の専門知識があったり、得意な人がいれば、当然、その年にクオリティが上がりやすい。それは自然なことだ。

ただ、実はレベルを上げるのは簡単で、一旦上がったレベルを下げるのは、意外と難しい。立派すぎる前例を作ってしまうとそれが基準になり、次の年もそれくらいのことをやらなきゃいけないんだ!と思いがちなのだ。そして次年度、得意な人がメンバーにいなければ、それは大きな負担になる。

だからといってあまり豪華な前例を作らないで、と抑制するのもなんだか違う気がする。

だから、勇気を持って毎年リセットする習慣をつける。比較しない。できる範囲でやる。今年はこれでいく!これでいいよね!……大丈夫、誰も気にしていない。その方が皆、気楽だ。

実情にあわせて変えていく柔軟さ


親のライフスタイルは多様化し、子どもが幼稚園でも不定期の仕事をしている人は増えている。下の子がいる人、妊娠中の人も多い。

仕事があるから、下の子がいるから……という理由で役員や係を免除していたら、やれる人の方が少ない。余剰時間が少ない人がこなせない業務量は、もう、幼稚園PTAの仕事として実情にあっていないと思っていいだろう。

「出来る人」がやるのではなく、逆。「誰でもできる」内容と量にPTAの仕事の方を簡素化していく必要がある。無くしていい業務もたくさんあるはずだ。誰かが言い出さなければ、変わらない。


いきなり大きな改革はできなくても、いくつかの工夫で少しPTA仕事が快適になるかもしれない。もうすぐ役目が終わる人も、来年度やる人も、ささやかなことから、ちょっと意識してみてはどうだろうか。

卒園まであと一息、年が明けてもアルバムなど卒園関連の仕事が待っている。「がんばりすぎず」「適度に」こなすとしよう!


狩野さやか狩野さやか
ウェブデザイナー、イラストレーター。企業や個人のサイト制作を幅広く手がける。子育てがきっかけで、子どもの発達や技能の獲得について強い興味を持ち、活動の場を広げつつある。2006年生まれの息子と夫の3人家族で東京に暮らす。リトミック研究センター認定指導者。