半同居婚、おめでた事実婚、子連れ初婚、女×女婚、役割逆転婚、お見合い婿入り婚、浮気容認婚、じゃんけん妻氏婚……。

拙著『オトナ婚です、わたしたち』では、形にとらわれない結婚=「オトナ婚」をする女性たちに、そこにいたるまでの経緯や、いまの生活について、本音で語ってもらっています。ゲイ男性と結婚している中村うさぎさんの原稿も、収録させていただきました。

わたしがこの本を書こうと思ったのは、結婚ってなんなのか、どうしたら相手とうまくつがっていけるのか、ということを知りたかったからです。わたしは離婚を経験しているので、「それが分からないと次回もヤバイ(汗)」と思ったから。

一般に「結婚」というと、入籍や同居、結婚式などがイメージされますが、本当にそれが「結婚」なのか? むしろ、そういった型をはずして「つがう」人たちに話を聞いたほうが「結婚の本質」がわかるんじゃないか? そんなふうに思い、取材を始めました。

お互いを尊重するために ―― おめでた事実婚、役割逆転婚


たとえば、本書に登場する祝明子さん(仮名)。
彼女は「おめでた事実婚」をしています。“ふつう”は「子どもができたら籍を入れるもの」と思われていますが、彼女もダンナさんも自分の苗字を変えたくなかったため、法律婚はせず、事実婚の状態で子どもを育てています。

祝さんは離婚経験者なのですが、彼女は前回の結婚で、ほんとうは名前を変えたくないのに無理して入籍したところ、大変ストレスがたまり、離婚を後押しする結果となってしまいました。それで今回、彼女はあえて籍を入れないという選択をしたそうです。

祝さんは、こんなふうに語っていました。
「『自分がほんとうに居心地のいい何か』を守った結婚であること。それなら、そんなに無理しないで、楽しんで続けていけるのかなーって思います」


夫が家事・育児を担う「役割逆転婚」の森澤雅美さん(仮名)も、同様です。
結婚当初は、雅美さん夫婦も、夫がメインで稼ぎ妻が家事・育児を担うという“ふつう”のスタイルだったのですが、さまざまな事情により、そのような分担を断念せざるを得なくなりました。喧嘩をくりかえし、離婚寸前の状態にまで陥った雅美さん夫婦でしたが、そんなとき、彼女は気付いたのです。

「自分は自分でちゃんとしていないから、こういうことになる」
雅美さんはこれ以降、自分たちの関係を「夫婦」としてではなく「ふたりの人間の関係」としてとらえるようになりました。その後、雅美さんが大黒柱として稼ぐようになり、ふたりはいまも助け合いながら、子どもたちを育てています。

一律に同じ形をめざすから窮屈になる


章の合間にはさんだコラムでは、取材させてもらった人たちの言葉を紹介しています。
「法律婚の落とし穴」「事実婚、ホントのところ」「子どもをもたない理由」「同性カップルにとっての結婚式」「浮気容認夫の言いぶん」「セックスレスって、どうなのか?」等々、同じようなことを言っている人もいれば、正反対のことを言っている人もいて、「世の中には、いろんな考えの人がいるものだなぁ」と考えさせられます。

もしかしたら「こんな一般的でない、ヘンな形の家族は、『幸せ』とはいえないのでは?」と思う方も、いるかもしれません。

でも、彼女たちにとっては、逆なんだと思います。みんなが頭に描くいわゆる“ふつうの家族”……お父さんがメインで稼いで、お母さんが主に家事をこなし、子どもがいて、みんなひとつ屋根の下に暮らしている、みたいなものを“一律に”めざすものだから、かえって窮屈になってしまう。そのせいで関係がこわれてしまうことだってある。

彼女たちはそれをよくわかっているから、自分たちに合った、それぞれのつがい方を選んでいるのでしょう。


大塚 玲子
1971年生まれ。都内の編集プロダクションや出版社に勤めたのち、妊娠を機にフリーとなる。以来、編集者、ライターとして、書籍やムックの企画・編集・執筆などをおこない、離婚・結婚や、子ども、家族をテーマにした仕事を多く手がける。