「ジョセイタイインがね」、息子が言う。
ジョセイタイイン? あぁ、「女性隊員」か。
最近、1960~70年代の昔のウルトラマンシリーズに夢中だ。

「ジョセイタイインの仕事はね、現場にはあまり急行しない、コーヒーやお茶をいれたりする、コンピューターで調べたりする」。
おぉ、ひと昔前の、なんともステレオタイプな仕事っぷり!

40年以上前の類型化された性役割モデルを子どもが正確に読み取ってしまった事実に軽く焦り、「でも、南夕子は女性だけど北斗と一緒にウルトラマンエースに変身するよね?」と、何となくフォローしてみる。


■戦隊ものにおける女性


75年にスタートした「スーパー戦隊シリーズ」の初代「ゴレンジャー」では、5人のうちモモレンジャーが紅一点だった。80年代からピンク+イエローも女性になるケースが出始め、設定はさらに多様化しつつも、だいたい1~2人の女性が含まれている。

最近のシリーズ3代の女性隊員の変身前の姿を見ると、ピンクは「女子大生でお嬢様」や「元王女」という、いかにも女の子なのだ、け・れ・ど・変身するとすごい。イエローは、女の子な・の・に・「活動的」で「負けん気が強い」。

変身後同等に戦っていても、これらの設定で「女の子らしさ」という性役割イメージは、むしろ強調される。

さらに、「恋心」の概念すら無い幼い男児をターゲットにしながらも、ストーリーにはそんな要素もちりばめられる。

「アイドル姿で男性を『クラクラ~』とさせて、『骨抜き攻撃』する敵」が出現した時、息子に「今どうやって攻撃したの?」と聞かれた。その設定が理解できない男児に、「大きい男の人はかわいい女の子を見るとね……」なんて説明をしながら、こういう男と女の類型を一般化して解説するのもどうなんだろうなぁ、と自問する。


■同族意識をもち排他的になる子どもたち


性役割意識は、子どもたちの側からも押し寄せる。

男女の存在を理解し、相手の性別を判断するというのは、それなりに高度な認知のステップで、幼いうちはそれすらわからない。

でもどういうわけか、幼稚園くらいになると、女児はお姫さまの衣装をつけてふわふわと跳ね回り、男児はヒーローのマントをつけて走り回る。次第に、「男で遊んでるのに女は入ってくるな」並の排他的な表現をする男児も出てれくれば、男の子とは遊びたがらない女児も出てくる。

おままごとにおいては完璧に性役割を理解して演じ分けるに至る。

その年齢で自然とそういう意識が芽生えるのか、世にあふれる類型の提示がそうさせるのか、きっとどちらが先でもなく、相互に作用して、男だからとか、女だからとか、そういう性役割に埋もれ始めるのだ。


■影響されないで欲しいと思いながら縛っている親


自分に子どもが生まれた時、「社会が決める性役割や、既成概念や、そういうものに縛られず自分なりの道を探せる人になってほしい」と本気で思った。

しかし、だ。
実際には、自ら「男の子がこんなことで泣いたら恥ずかしいよ」と言ってしまったり、「男なんだからあまり慎重にならずもっと体当たりで挑戦して欲しい」と思ってしまったりもする。

メディアだけでなく、親自らもそうやって性役割モデルをちらちらと提示しているのが現実だ。

自分で縛っているくせに、自由でいて欲しいとも思う矛盾は、なかなか解消できない。


■確かにやっぱり何かは違う


男らしいとか、女らしいとか、そういう「性役割」は固定すべきでないと思うけれど、そうは言ってもやっぱり「性差」はある。生物として別ジャンルであるという事実は社会が決めた性役割とは別次元に存在する。体だけでなく、「なんとなく」のレベルでも。

幼稚園を見に行くと、男子の方が圧倒的に精神的に幼く、女子のおかげでクラスの秩序や出し物のクオリティが保たれていると感じてしまう。俗説、実感、織り交ぜながら「やっぱり男の子だねぇ」「やっぱり女の子だねぇ」と、母たちは、よく口にする。


そういうオリジナルな「違い」を抱えつつ、数々の性役割モデルに影響を受けながら、子ども自身が、次第に自分独自の「自分らしさ」を構築して行くのだろう。ひとつの類型を無批判に受け入れるのではなく、自分の頭で考えられるようになって欲しい。

親として矛盾したことも言うだろうけれど、特定の役割モデルを押し付けることはしないから……。

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そんなことをちょっとしんみりと思いながら見つめた視線の先で当の息子は……、女子の前でなんのためらいもなく「全脱ぎ」で水着に着替え中。
性役割云々の心配より前に、そろそろマナーを教えるべきか。

とりあえず、全裸で帽子とゴーグルをつける前に、まず海パンを先にはきなさい!!


狩野さやか狩野さやか
ウェブデザイナー、イラストレーター。企業や個人のサイト制作を幅広く手がける。子育てがきっかけで、子どもの発達や技能の獲得について強い興味を持ち、活動の場を広げつつある。2006年生まれの息子と夫の3人家族で東京に暮らす。リトミック研究センター認定指導者。