息子が幼いうち、子連れで誘い合って出かけるのが苦手だった。

外出が苦手だったわけではない。産まれてすぐから、何かと「行かなければならない」ところが多かったので、多分、人一倍出かけてはいた。そして電車やバスで出かけ慣れていた方なんだとは思う。

でも、多分、だからこそ、子連れ同士で出かけるなんて、想像するだけで「面倒」だった。

■自分の子だけで手一杯!


外出が多かったから、子どもの機嫌を「乗車時ベスト」に持っていくコントロールの大切さと大変さは、実感していた。一度家を出たら、どこで飲ませて/食べさせて、どこで眠りを誘発してどのタイミングで電車/バスに乗って、ここは抱っこでここはベビーカーにして……、その想定スケジュールが頭から離れることはない。


ひとりぶんのぐずりなら、途中下車したりルートを変えたりしながらかわせる。独特のペースが必要な子でも、親がひたすら待って、のんびり時間をかけて付き合えばいいだけだ。でも、これ、誰かと一緒に出かけたら、その親子を待たせることになる。

しかも、自分の子とは別のペースの子どもの機嫌も加わるわけだ。「外界に合わせる」なんてできない小さな子どもがふたりと、自分の子で手一杯の新米母がふたり。

……それ、無理! 面倒が増えるだけ! それが率直な気持ちだった。

■子連れはかさばる


バスで、次々と4台のベビーカーが乗り合わせてしまったのに遭遇したことがある。
イベントでもあったのか待ち合わせだったのか、滅多にない状況だ。譲り合ったり畳んだりでどうにかなっていたけれど、バスにベビーカー4台は、かなりの飽和状態だ。

空いている時間帯の電車でだって、同じ位置にべビーカーが2台以上いると、もう、かなりの圧迫感を生み出してしまう。

ベビーカー+大荷物なこと自体は、子連れ移動にはやむをえないしそれでいい。ただ、親子一組でもけっこうかさばるのが事実。これがさらに二組、三組と同じ場所に存在すれば、それだけで、占有範囲はぐんと広くなる。

狭い車内でこれは結構目立つ。ひとつのグループの占有面積が広すぎると、ベビーカーに限らずそれがどんな集団でも、「ちょっと邪魔」なムードになりやすい。

これは、周りの人にとっても当事者にとってもあまり快適なシチュエーションではない。小心者にはちょっとしんどい。

■トーンが合わないと疲れる


子ども向けの商業施設で見かけた赤ちゃん連れお母さんグループのお出かけシーン。ひとりだけ特別遠慮がちに振る舞っている人がいた。

赤ちゃんつながりで知り合って日が浅いんだろう。周りへの配慮なのか、子どもの様子が心配なのか、ひとりトーンが違ってちょっとしんどそうだった。

公共の場でどんな気遣いをするかは、人によってかなり違う。どの程度が適正かなんてことは判定できないけれど、単純に、その「程度」が合わない者同士で過ごすというのは、お互い結構しんどいものだ。

子どものための遊び場でもそうなのだから、電車やバスで過ごす時のそのずれは、もっと重くてしんどい。

■でも、一緒に過ごすのは楽しい


でも、人が嫌いなわけじゃない。やっぱり人に会って人としゃべるのは好きだ。どうしようもないと思い込んでいたことがあっけなく氷解したり、どうにもならない気分がいとも簡単に切り替わったりする。

自分の子どもはこうだと思い込んでいたことが、誰かと一緒に過ごしてパターンを崩されることで、意外なプラスの発見につながることもある。

たまには、誰かと一緒にどこかに遊びに行きたい。子どもをみながら思い切り大人同士でおしゃべりもしたい。

■現地集合・現地解散はいかが?


そこで、だ。現地集合・現地解散、ていうのはどうだろう。

たとえ近所の友人でも、あえて現地集合。道中別々に行動すれば、交通機関でやたらとかさばらなくて済む。子どものリズムに合わせ、うんと早く目的地に到着して先に遊んでいたっていいし、約束ぎりぎりに到着したっていい。

帰りもあえて現地解散してしまえばいい。ホームで何本も電車を見てから乗りたい子もいれば、子どもが寝入ったうちにさっさと猛スピードで帰りたいお母さんもいる。子どものペースはいろいろだ。

子どもの機嫌や体力を見越して「今帰るのがベスト」なタイミングが来たら、皆より先に帰ったっていい。「ごめんねー、そろそろ機嫌悪くなりそうだからうちは先に失礼するけど、もっと楽しんでいってねー」で十分。

大人の感覚はそうじゃなくても、「○○ちゃんが帰るんだから帰ろう」なんて社会性は、乳幼児にはまだ必要ないのだから。

私は、自主的に現地集合にさせてもらったり、先に失礼したこともあるけれど、そんなことで角は立たない。現地では皆といっしょのペースで動き、大人同士おしゃべりもしながらうんと楽しんで、往復はじっくり息子だけのペースに付き合える。無理なく快適に過ごせた。

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いい季節になった。こんな工夫でちょっと動き方と気持ちを楽にして、家に閉じこもらず、たまには誘い合って現地集合・現地解散のお出かけしてはどうだろう?

ただ、乳幼児の興味は、おどろくほどバラバラで、結局一緒になんて遊ばないから、現地集合した途端に目的地内で事実上の現地解散→自由行動→現地解散でバイバイ、なんて展開もあるかもしれない。まぁ、それもご愛嬌ということで……!

狩野さやか狩野さやか
ウェブデザイナー、イラストレーター。企業や個人のサイト制作を幅広く手がける。子育てがきっかけで、子どもの発達や技能の獲得について強い興味を持ち、活動の場を広げつつある。2006年生まれの息子と夫の3人家族で東京に暮らす。リトミック研究センター認定指導者。