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子どもの「逆境に負けない心」を育てる本 - 楽しいワークで身につく「レジリエンス」』(法研)
ビジネス界で話題の「レジリエンス」を、大人が実践しながら子どもに教える一冊。
NHK Eテレ『エデュカチオ!』で、「親子で育む“折れない心”」として特集された内容も一部収載。


子どもが幼いうちは、なんらかのトラブルに巻き込まれたときや壁にぶつかったとき、おもに解決するのは親や周りの大人でしょう。

しかし、大きくなるにつれ、子どもが自分で乗り越えることが必要となってきます。受験や就職活動もそれらのうちのひとつ。

子どもが失敗して傷ついたり、泣いたりする姿は極力見たくないものですが、成長には失敗がつきもの。大人自身の今までの人生を思い起こしてみても、失敗や挫折を乗り越えて大きく成長した経験はたくさんあるはずです。

だとすれば、子どもがそれらの「逆境」にぶつかったときに、立ち直れなくなったり道を見失ったりしないように、逆境から這い上がる力を育ててあげることが必要なのではないでしょうか。その力こそが、本書で取り上げる「レジリエンス」です。

■ストレスフルな時代を生き抜くために「レジリエンス」を身につけよう


「レジリエンス(resilience)」は、「回復力」「逆境力」などと訳される言葉。
「逆境をしなやかに跳ね返し、さらにそこから成長する力」を指します。

たとえば、2014年ソチ冬季五輪で浅田真央選手が見せた、わずか1日でのどん底からの立ち直りは、海外メディアなどで「レジリエンスがある」と称賛されました。さらに先日の羽生結弦選手による、激突事故での負傷後の復帰初戦となるグランプリファイナル優勝も、「レジリエンスを発揮した」結果といえるでしょう。

彼らのような精神力の高い人たちだけでなく、じつは誰もが心の中に、レジリエンスの種を持っているのです。そして、元々の種の大きさに違いがあっても、大人でも子どもでも、強く大きく育てていくことができます。

現在、レジリエンスプログラムは、おもにビジネスマンのためのストレスマネジメント技術として世界的に広まっています。

しかし、変化が激しく、ストレスの多いこの社会に飛び出していく子どもたちだからこそ、レジリエンスを身につけてほしい。現在子育て中の編集者である私は、そのような思いで本書を企画しました。

■日々のストレスから素早く立ち直り、大きな逆境からも這い上がれる力


本書のもととなっているのは、欧米の学校で採用され、効果が認められている10代の子ども向けのレジリエンス教育プログラムです。

ポジティブ心理学によって科学的に実証されたこのプログラムを、本書では日本人向けにアレンジ。また、ご家庭でも活用いただき、小学校低学年のお子さんにも対応できるようにしています。

このプログラムには、次の2つのコンセプトがあります。
・感情の調整や自己コントロール能力を身につけ、日々のストレスに対処できるようにする
・レジリエンスの基礎となる4要素を鍛え、心の力を育てる

これにより、もし大きな挫折や困難にぶつかったとしても少しでも早く抜け出し、さらにはそれをバネにして成長に結びつけることを目指します。

■ネガティブな感情と付き合い、うまくコントロールする術を身につける


本書は、おもに第1部の「知識編」で、大人がレジリエンスの基礎を身につけ実践していきながら、第2部の「実践編」で、子どもに教えていくという2部構成。大人も子育てや家事、仕事、夫婦関係など、日常のあらゆることに活用できるノウハウが満載です。

たとえば、ついカッとなって子どもを叱ってしまった経験は、おそらく誰にでもあるでしょう。

そして、後悔で頭がいっぱいに→そのことを夫や妻から責められ、夫婦仲まで険悪に→さらに悶々として家事や仕事がはかどらず……というように、ネガティブ感情の悪循環に陥ったことはないでしょうか?

本書では、ネガティブ感情による衝動的な行動を抑える方法や、ポジティブな行動や結果に変えて悪循環を断つ方法を、具体的な事例やワークを紹介しながら解説しています。

とはいえ、怒りや不安、悲しみなどのネガティブ感情を持つことは当然で、それ自体を否定するものではありません。問題なのは、ネガティブ感情に影響されて、悪循環から抜け出せなくなってしまうことなのです。

ネガティブ感情を持ってしまう「ありのままの」自分を受け入れたうえで、コントロールする術を身につけられるのが、レジリエンスプログラムの最大の魅力。実際、「ネガティブでもいいんだ」と知るだけで楽になれた子どももいるそうです。

なお、本書では、ネガティブ感情の原因となる物事の捉え方を「耳元でささやくネガティブなオウム」にたとえ、オウムの言葉を修正したり、ポジティブなオウムに変えたりする方法を指導しています。

非難オウム、心配オウム、あきらめオウム……。お子さんの肩によく乗っているのは、何オウムでしょうか? 付属の「オウムくんカード」を使って、親子で楽しみながら学んでいただけます。

斉木 千夏(さいき ちなつ)
編集者。PC解説書の出版社でテクニカルライターとして勤務後、児童書や専門誌の編集・DTPを経て、健保組合の広報誌や家庭医学系の実用書を制作する会社に入社。担当書籍に『放射能からママと子どもを守る本』(法研)などがある。現在は、実用書のほか健康・子育て系のWEB記事を中心に担当。2児の母。