「1月に子どもが生まれるんですけど、保育園、早生まれだとどうですかねえ?」

筆者は今年の2月末に次男を出産をしたのだが、時期的な問題で4月入園が間に合わず、保活に苦労した。

早生まれの保活 ―― 現在進行形の実録
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早生まれの保活 ―― 出産~新年度を迎えて
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このことは周りの友人知人がみな知るところだったので、仕事に復帰した今は、冒頭のような質問を受けることが増えた。

……そうか、まわりはそろそろ4月入園の準備をし始める時期なのか。


次男は5月に何とか入園し、丸5ヵ月が経とうとしている。
初っ端に入院した以外はおおむね元気で、お休みすることもなく過ごしている。

昨年度の保活はほんとうに気が気ではなく、妊娠中のつらい時期を全部費やしたといっても過言ではない。保険の意味もあって認証園は大変な数をまわったが、結局どこにもかすることがないまま、認可園にあっさり決まったという経緯があった。

子どもたちを公立認可園2園、私立認可園1園に通わせてきた経験から、筆者の見てきた範囲に限られはするが、それぞれの特徴などを挙げてみたい。

■認可園。私立は公立となにが違うの?


先に結論を述べるとすれば、保育園選びはなにより「相性」であろう。
お子さんと先生の相性、保護者と先生や園の相性など。

以前、私立の認可園に見学を申し入れたときに、園長先生から、
「料金は認可園なんで公立と同じシステムですけれども、私立ということで、園の考え方や方針にご理解をいただければ……」
と言われたことがある。

聞けば聞くほど、私立園は独自の方針で運営をしており、だいたいの保育目標は公立のそれと同じかと思うが、なにかに特化していたり、オプションメニューがあるなど多岐にわたる。
筆者が見た限りでは、

・園に薬を預けて与薬をしてもらえる
・英語を教えている
・体操に力を入れている
・宗教系の園では宗教ならではのイベントが発生する(仏教やキリスト教等)
・バザーへの参加(出品、購入)
・姉妹校との合同イベント

このようなものがあった。

■公立園はどこに入っても同じなの?


では、公立は方針が均一なのか?といわれれば、その限りではない。

面積や環境(園庭の広さ、設備)による違い、地域との関係性、園長の方針(これが実はなかなかに強力)、先生の男女比などでも、園の雰囲気に差がでる。

そのあたりは、ソニー教育財団が行っている「ソニー幼児教育支援プログラム」など、保育内容のコンテストがあるのだが、過去入賞園リストに候補となる保育園が入っていれば、その園が何に力を入れているのか、垣間見ることもできるだろう。

筆者の居住区ではとくに、独自の教育方針で幼保~小中学校までがシームレスにつながるように、プログラムが組まれている。そのせいもあると思うが、研修は自治体で同じものを行っているようで、時々勉強会に行く先生の姿を見かける。

私立の場合も、なんらかの勉強会には参加されていると思うが、そのあたりの情報を保護者に対して開示するレベルは、園によってまちまちだろう。

個人的な感想では、“園全体が残念”というところもなくはなかったが、だいたいは先生単位の「保育の質」にばらつきが見られるということであり、入り口にアンケートポストが置いてあったり、「第三者評価」を行っていることを周知している園では、とてつもなくひどい!ということは、少ないのではないだろうか。

■公立と私立、最大の違いは「お金」


なお、公立認可園と私立認可園で何が違うの?ときかれれば、真っ先に「延長料金です!」と筆者は答えるだろう。

筆者の居住区では18時30分が定時となり、それ以降は延長料金が発生する。
次男が通う私立認可園では30分500円だが、筆者の居住区の公立認可園は、収入に応じて延長料金が異なる。

計算が複雑になるので説明は省くが、共働き世帯でだいたい世帯年収6~700万円台の場合、1時間320円、つまり30分160円となる。ここで約3倍の開きが生じるのだ。

週5回1時間ずつ延長にかかったとすると、公立園では月6,400円の延長料金ですむところ、私立認可園では月20,000円である。
(※なお筆者の居住区では、公立園の延長料金は同一月内11日目から半額になるサービスもあるのでさらに安い)

ちなみに、第二子の保育料が半額となっている我が家では、次男の1ヵ月分の延長保育料が、朝~18時30分までに対してかかる通常保育料金を上回っている。元が安いとはいえ、毎月支払いの時期になると「なんとかならんかなあ……」とため息が出てしまう。

■プライバシー保護の観点からみた違い


プライバシー保護に関しては近年とくにきびしくなっており、筆者の居住区の公立園では昨年度から、先生が撮った園児写真のDVD貸し出しが中止になっている。また、地元のケーブルテレビが定期的に取材で入るため、年度あたまに書かされる、プライバシー保護関連の書類は非常に増えた。

私立園では、とてつもなく管理がきびしいところがあるが、そうでもないところは逆にゆるい印象すらある。保育園のブログに園児たちの写真が載っているのを見ると、これは大丈夫かな?と思わなくもないのだが……。

■東京にある「認証園」という存在


東京以外の方にはなじみがないかもしれないが、認可園の単位が区なのに対して、都の管轄である『認証保育所』というのが存在する。そのほかの道府県でも似た取り組みをしているところはあるだろう。

認可園ほど設置規制が厳しくないが、それなりの基準を満たしているということで、都内ではこちらの人気も高い。保護者の就業の有無にかかわらず入園が可能だが、実際にはどの園も激戦で、仕事を持っていないと入れないのが実情だろう。

料金はばらばらで、見学に行ったところは月6万円台から、高いところでは10万円程度のところもあった。しかし、自治体別に助成金が用意されていることがあり、筆者の区では、認可園の料金との差額が支払われるため(対象年齢や上限金額等、一部条件あり)、先に正規の金額を一旦払う必要はあるが、数ヵ月に1度まとめて、区から認可園保育料との差額がキャッシュバックされる。

英語やスイミングなどの習い事を行っていたり、手ぶらで連れて行ってあとはおまかせ!というところまであり、見学を繰り返すうちに「これは至れり尽くせりだなあ」と思う園も多かった。

“認証園人気”という事情や入園時期も影響したのか、筆者の次男は区内および近隣区の認証園はどこにも入ることができなかったのだ。

認証園、筆者の見た限りでは二極化が進んでいるようだ。保護者にほとんど負担がない、その代わり料金が高めのセレブ志向と、地域に密着し、昔から小さな部屋でおばちゃんたちが営んでいる互助会系保育園。

どちらにもそれぞれのよさがあり、同じだけデメリットもあった。

・ほとんどの園が2歳児クラスまで
・園庭がない
・お金が高い

あたりがデメリットとして考えられるが、先生の質がいい、園の雰囲気がいい、といった声も聞かれた。

これはもう、何をよしと思うか、個人の価値観の話になってくるので、一概には難しいだろう。ただし、認証から認可園に転園したものの、雰囲気や先生と合わなくて、元の園に戻りたい!と言っている知人が1人や2人ではない筆者周辺である。


そんななか、認証園を認可に転換する動きが進んでいる。

待機児童問題には認可園を増やすことだ!→新規で園を立てるにはハードルが高い(地域住民の反対など)→じゃあ、今ある認証園をスカウト!

ということなのだろうが、これでは実質的に数は増えていないうえに、認可園になることで基準に満たない在園児があふれてしまい、新たな待機児童を生んでしまった。まさに負のループだ。

認証園が認可園になると新たな規制が増え、今までどおりに行かないこともおきるだろう。認可では得られないエクスペリエンスを求めて認証園に向かう層もいる、というニーズを掴みきれていないことも問題と考えるが、そういった意見はどうしたら行政に伝わるのだろうか。

■きょうだい別園になることについて


最後に、筆者自身の話を少し。
そもそも激戦園に長男が入っていたところ、5月入園でないと次男が保育園に入れない状況となり、結果として今は兄弟が別々の保育園に通っている。

長男のところは家から徒歩圏内だが、次男にいたってはバス2本に乗って片道45分。職場とも家とも違う方向で、通勤には片道1時間半かかる計算だ。

半年弱過ごしてみて、いろいろと体に無理が出てきたのは事実……。

園の先生たちはよくしてくれるが、
「さみしいけど、お子さんのためにも、ご自身のためにも、お兄ちゃんのところに転園できたほうがいいわよね」
と言ってくれる。

長男の園では、「うちの転園申請どうですか?」と園長先生に聞くのが一種のお約束ギャグのようになりつつあるが、どちらの先生も兄弟がばらばらになっていることについて心を痛めてくださっていることを感じる。

正直、かつてのドラマの名台詞のように「同情するなら入れてくれ!」と思わなくはないが、こればかりはその年度の応募者の状況……つまりは“ポイント”如何だろう。

なお、我が家が“きょうだい加点”を使えるのは、次の4月入園がラストチャンスだ。来年の4月には、私の保活がほんとうの意味で終わるといいなあ……。そう思っている。

ワシノ ミカワシノ ミカ
1976年東京生まれ、都立北園高校出身。19歳の時にインディーズブランドを立ち上げ、以降フリーのデザイナーに。並行してWEBデザイナーとしてテレビ局等に勤務、2010年に長男を出産後は電子書籍サイトのデザイン業務を経て現在はWEBディレクター職。