2歳になるまでほとんど病気をしなかった長女が、2歳半を過ぎてからインフルエンザや突発性発疹、最近ではアデノウイルス感染症など立て続けに罹患している。長女は第一子で私自身に経験値がないため、「このままようすをみるべきなのか、今すぐ救急にかかるべきなのか……」とにかく心配で夜も眠れない日々が続いた。

私自身、過去に子宮外妊娠で痛みを我慢したため卵管が破裂してしまい、あわや命の危機、ということを経験しているので、なおさらである。

とはいえ、ほとんどのウイルスには特効薬がなく、基本的には自己免疫で回復するのを待つしかないケースが多いので、体調が悪い子どもをわざわざ病院に連れて行くことは、できることなら避けたいと思う親は少なくないであろう。インフルエンザが猛威を振るっている時期であれば、なおさら小児科に行くこと自体がナーバスになる。

そんななか、とても興味深いサービスがオープンしたことを伝え聞いた。その名もわかりやすく「小児科オンライン」というサービスで、スマホからLINEやSkypeなどを通じて、小児科医に直接子どもの健康状態についての相談ができるというもの。


事前にウェブから予約をする仕組みなので、待ち時間はゼロ。事前にウェブ上から詳しく相談内容が伝えられるので、予約した15分間は小児科医とマンツーマンでじっくり話ができる、というのがサービスの売りである。

サービスの利用料は初月無料で以降月額980円(税別)。ただし月会費を支払えば、相談は何回でも受け付けてくれるという。さらに相談の履歴がシステム上にきちんと残る仕組みなので、異なる先生が担当したとしても、子どもに関する基本情報をイチから説明する必要はない。

このサービスは医療行為ではなく、あくまで「相談」なので、病名を診断したり薬を処方してもらうことはできないが、スマホで画像を送ったり、LINEやSkypeを使ったビデオチャットで子どもの呼吸状態を見せたりなど、症状をより具体的に共有した上で、小児科医からアドバイスが得られるという点で先進的なサービスだと感じた。

「今まさに熱が出ている!どうしたらいい?」というような場面でも、直近の枠が空いていれば最短で相談できる。仮に緊急性が高い症状の時は、もちろん迷わず救急にいくべきだが、子どもの症状の多くの場合は、「今すぐ救急車を呼ぶほどではないが、このまま様子を見て良いのかどうか分からない」というパターンであろう。

実際に、救急外来を受診する子どもの8割は、自宅でようすを見ていても大丈夫な病状であるそうだ。救急外来を受診する前に、「小児救急でんわ相談(#8000)」 のような窓口に相談している保護者も多いのだが、電話でのやりとりには限界があるのか、最終的に「心配なら受診してください」という言葉で締めくくられることが多いと聞く。最終的な判断は保護者に委ねられるというわけだ。

子どもの成長とともに親の方も経験値を得ていくわけだが、子どもの健康状態に関する保護者の責任はとても重い。核家族化が進む中、さまざまなアレルギー疾患、発達障害など、病気の種類自体も増えているわけで、親が抱える「子どもの健康にまつわる悩み」はじつに多岐に及ぶ。それらは、「今すぐ専門の医療機関を受診しなければ!」という緊急性がないものが大半なので、結局そのような問題は、母親が抱え込むしかないことが多いのが現状である。

自治体によってばらつきはあるものの、公的な助成により小児科にかかってもお金がかからないケースが多いが、実際には緊急性が低い症状を、タダだからという理由で小児科に相談にいくことはない。その点、有料であっても「母親だけが抱え込みがちな不安」に寄り添ってくれるサービスはとても魅力に感じる。

「訴訟するまでの案件ではないが、専門的なアドバイスを聞いて安心したい」という、ある種“弁護士相談”に似ているのかもしれない。「おそらく大きな問題はないと思うが、念のため専門家に相談して、大丈夫だと背中を押してほしい」という感じである。

当サービスを立ち上げた橋本直也医師に話を伺った。
「とくに小児科医は、病気になった子を病院で待つことだけが仕事じゃないと思うんです。お母さんたちが抱える不安に寄り添いながら、子どもたちが健康でいられる状態を創り出すことも、医療者の役割だと考えています。」

先進国には日本よりもはるかに遠隔医療が発達しているところもあるが、日本はまだそのあたりの規制緩和が進んでいないという。国が規定する「医療」の線引きは政治がらみでもあるゆえ、一朝一夕に変革させていくのは難しい。しかし、「小児科オンライン」のようなサービスが、おもに母親たちが抱える不安とネット上の不確かな情報のギャップを埋め、子どもたちが元気でいられる社会の実現をサポートしていく、という理念に感銘を受けた。

現在「小児科オンライン」は、平日の夕方~夜間にかけての時間帯に限定してサービスを提供しているが、今後は受付時間を拡大していくとともに、個人契約以外にも企業の福利厚生としてのサービス展開や、保育関係施設との連携なども視野に入れてているとのこと。小児医療の分野における新たなインフラとなることを期待したい。


小児科オンライン
https://syounika.jp

森田 亜矢子
コンサルティング会社、リクルートを経て、第一子出産を機にフリーランスに。現在は、Baby&Kids食育講師・マザーズコーチング講師・ライターとして活動中。2才の長女と0歳長男の二児のママ。