「突然ですが、あなた、健康に自信はありますか……?」

夜中の健康食品紹介番組が私に問いかける。
テレビに映っているあなた。残念ながら、当方すっかり風邪を引いて寝込んでいる。なんならこの原稿をいま病床で書いているのだから……。

生まれてこのかた、入院したことなどなかった筆者だが、結婚してから、出産を含め、3度入院している。うち1回は、原因不明の高熱で10日間入院した。

子どもが増えると、保育園などでもらってきた病気の“親の罹患率”はさらに上がる。それでいて、我が家の兄弟どうしで感染することはまれなのだ。これが解せない。

そうだ、年々こちらの免疫力と体力が落ちているのかもしれないなあ。

子どもたちはどんどん元気になって、長男(6歳)に至ってはここ数年発熱での欠席をしていない。1歳の次男ですら今年は2回休んだ程度じゃないだろうか。

出会った頃はともに30代になりたてだった我々夫婦も、現在は40代である。
若いつもりが、年をとったのだ……。

■暗い話にばかりやたら詳しくなったもんだ


昔、不健康自慢をしてくるおっさんがどうにも不可解だったのだが、最近周りの同年代でも、「尿酸値やべえ」「γ-GTPが……」なんて声が聞こえはじめた。

夫も私も、会社の健保で行われる人間ドックを毎年受けるが、オールAということはなくなってきた。つまり、この年代(=中年)の最大関心事が健康問題、ということなのだろう。

数年前、腸の具合が悪く、かかりつけ医の紹介で、大きな病院での大腸内視鏡検査を受けたことがあった。モニタを見ながら行うので、腸の中にはなにもない、ということも当日確認できたのだが、夫の運転する車で自宅に向かっていた時のこと。同級生からの電話を受けた。

「ねえ、◯◯ちゃんって覚えてる?」

2つ下の後輩が亡くなったという知らせであった。
数年前に出産したばかりではなかっただろうか?

こういう時の、うまい返し方がわからない。
「えー」と「どうして」以外の言葉が出てこなく、己のボキャ貧を恨んだ。

「今何してたの?」ときかれたので、ちょうど大腸のカメラやってきたところ、と話したのだが、専業主婦をしていると、夫の加入健保で被扶養者健康診断の案内が来ればいいほうで、なかなか能動的に人間ドックを受けないという話を聞いた。

「健康診断行こう」
「うん、そうだね」

そう言って、私たちは電話を切った。

1976年生まれの筆者、今年で40になったわけだが、数年前から同年代の有名人が亡くなるニュースを目にすることが増えた。それまでは事故などが多かったものの、近年、同級生の亡くなる原因はたいていが病死だ。

数年前まで、人間の“エンディング”に仕事で携わっていた筆者なのだが、多くの方の≪その時への備え方、迎え方≫というのをたくさん見守ってきた。

自分が他界することを前提で家族になにか残すこと。
30代の私にはいまいちピンとこなかった部分もあったのだが、今ははっきり、見えるところにあるなと感じられるようになってきたのだ。

人生80年時代の折り返し地点って、そういうことなのかもしれない。

■働く親はカラダが資本


お母さん、もしくは、家事育児を主に担当しているお父さん。
ちょっと具合悪い時に、すぐ病院に行けているだろうか?

専業主婦のお友だちからは、子どもがまだ小さくて医者に行けないという話をたびたび聞く。看護師さんが面倒見てくれるところもあるようだが、待機児童が大変なことになっている都内では一時保育の確保もおそらく厳しい。まして、当日急に、となった時、本当にどうしたらいいのだろうか。

まだ言葉もしゃべらない子どもとふたりきりで家にいる時、突然具合が悪くなったら? それは、長男が乳児のころ、たびたび考えていた。面倒を見なければならない他人がいる以上、一人暮らしで倒れる時より心配事が多い。

長男が1歳のころ、ロタウイルスにかかり、我々夫婦と、長男発症時に付き添っていた筆者の母も感染し、“一家全滅”になったことがあった。それからの数日は、「比較的具合のいいほうが子どもの面倒を見る」として回すのだが、脳内を“病々介護”という4文字がよぎるのだった。

子どもがいると、つい、子どもを優先して自分のことが後回しになりがちである。しかし、自分の健康を第一にしておかないと、いざとなった時に子どもを守れない。

幸いにして筆者は朝の遅い業界であるし、通院してから出社しても定時に間に合ってしまうことがあるので、子どもを保育園に預けたあとに気兼ねなく通院することができる。

しかし、勤怠がガチガチの会社にお勤めの方もいるだろうし、病気による遅刻や早退が許されない、「体調不良は甘え」と罵られるなど、たまにではあるがひどい話も聞く。
また、予定がみっちりつめ込まれてどうにもならない人もいることだろう。

会社の仕事も家の仕事も、パフォーマンスを最大限に上げるためには、日頃の健康維持がカギとなるだろう。

働く親の健康管理には、保育サービスの充実と会社での福利厚生面の充実、この2つが同時に必要なのではないかと思う。また自営業の方は、どうか、サラリーマン以上にご自愛いただきたく。

■“母の上機嫌”はある種の大黒柱


CMで「おなかがすくと○○になっちゃう」というシリーズがある。怖いイメージのタレントさんや大御所と呼ばれる女優さんが出てくるあれだ。空腹で性格変わっちゃうなんてそんなことがあるのか?と思ったが、近年、筆者も空腹時のイライラがひどい。

それは個性なのか加齢なのかわからないが、若い時はそれほどでもなく、空腹に気づかず動きまわって突然倒れることがよくあった。

それが、子を持ってから自分の空腹にえらく敏感で、長男を怒鳴りつけているときはたいてい空腹なのである。そのロジックに気づいてから、退社前に何かを食べるようにしたら、太ってしまった。体型の変化もまたイライラの原因となる。

もう、じゃあ、どうすればいいのだ!
私は子どもを、そんなしょうもないことで叱り飛ばしたくないのに。

更年期かなー、と思って一度婦人科で相談したが、ホルモン値的にはなんの問題もなく、冷静になって考えてみるに、30歳の頃は自分一人の稼ぎで自分の面倒だけ見ていればよかったものの、家族が増え、また一人増え、産後収入は減り、自由に使えるお金は激減。

あっ、イライラする要素しかなかった……。

私が機嫌悪くしていると、長男は私の名前を呼びながらそっと近寄ってくる。
マッサージが得意な長男に肩もみをされ、「だいすきー」とギュッとされると「お……おう、そうか……?」という気にはなってくる。

こんな小さい子に気をつかわせて申し訳ないね、と思うのだが、こういう時の機嫌のとりかたは、圧倒的に次男のほうがウワテだ。一発でこちらを笑顔にする。しかも、マッサージテクでは兄に負けていない。

彼には、なにか持って生まれた才能のようなものを感じるし、長男は努力の人なのかもなと、兄弟それぞれの特性も、落ち着いて観察すると見えてくる。

母親である筆者の機嫌がいいと、子どもたちもそれぞれ楽しそうにするし、何より「お母さんの機嫌がいいと家庭内が平和だから嬉しい」と夫はいう。

我が家のようにもしお母さんがあまり家事育児を担っていないとしても、母が健康で機嫌がいいと、家庭が明るく平和になるのかもしれない。

ではそれを維持するために必要な物は何かというと、夫や子どもたちの協力であり、まあ、ざっくり言ってしまえば夫の頑張りがそれを左右するのであろう。(ええー!とマスオさんよろしくのけ反る夫が目に浮かぶ)

■人は忘れる生き物だというけれど


芸能人が闘病を告白するたびに健診予約が埋まるなど、テレビの影響とはすごいものだなあと思っているが、人の興味はめまぐるしく変わるし、少しするとすぐ風化してしまうことがある。

定期的に気をつけていれば防げるものも、その忘れている間にどうかなってしまったらもったいない。

できれば病気の告白を機に人が動くのではなく、ものすごく健康的な人物の「私がこんなに健康なのは定期的にメディカルチェックをしているからです」という発言がきっかけであったり、「季節的に」「誕生日だから」など、「ハロウィーン=仮装」のように「◯月=健診」が定着していけばいいのになあ、と思うのだが、なぜに人というのはネガティブなニュースにしか行動を促されないのだろうか。

ちなみに、毎年会社で6月に健診を受けている筆者は、区から来た婦人科健診の無料チケットを行使すべく、次の健診までのちょうど真ん中である12月、予約を入れようかと思っているところだ。

ではみなさまも、どうか元気で、お気をつけて。

ワシノ ミカワシノ ミカ
1976年東京生まれ、都立北園高校出身。19歳の時にインディーズブランドを立ち上げ、以降フリーのデザイナーに。並行してWEBデザイナーとしてテレビ局等に勤務、2010年に長男を出産後は電子書籍サイトのデザイン業務を経て現在はWEBディレクター職。