2017年2月24日の金曜日から、「プレミアムフライデー」が始まる。
経済産業省が経団連などと連携して検討してきた施策で、毎月、月末の金曜日は15時に退社をし、消費活動を促そうというものだ。

去年の12月、ニュースを聞いてまっさきに思ったのは、
「あ……保育園から『15時に退社できるんだったら、まっすぐお迎えに来てくださいねっ』って言われそう……」
ということだった。
というのも、私の娘の通う保育園は、「保護者が休みの日は、子どもも休み」「勤務先から保育園へは、買い物などの寄り道せずにまっすぐお迎えに行くこと」「家に買い物の荷物を置いてお迎えに行ってもダメ」というルールがあるからだ。
保育園によって、このあたりのルールの厳しさはさまざまだと思うが、私の通う園のルールは決して珍しくはないと思う。
プレミアムフライデーの公式ページ( https://premium-friday.go.jp/ )をのぞいてみた。15時に退社して、どんなことができるのかが書いてある。
その内容は、下記のとおり。
あ~っ、まぶしい!
そして何なんだろう、この置いてけぼり感……。
いったい、小さな子どもを持つ母親は、この中の何ができるのだろうか。
ワーキングマザーの場合、保育園ルールによって、
・平日昼間にゆったり贅沢午後ブラショッピング
・大切な人と夕方からゆっくり「アーリーディナー」
・昼からたっぷり「アフター3エンタメ」を楽しもう
は無理目だ。
「ちょっと長めの休日で普段は行けない2.5日旅」をしようとしても、小さい子連れで夜間移動は、子どもにとって負担なだけだろうなあ。つまり2.5日旅で海外も現実的ではないし。
できることといったら、せいぜい最後の「家族で揃って料理を作って『午後パー』をしよう」くらい。でも、その料理は誰が作る?テーブルの上は誰が片づける?
ワーキングマザーが眼中にないこのノーテンキな無神経さ、いつぞやの「3年間抱っこし放題」と通ずるものがあるような気がするのですが。
とはいえ一応、ワーキングマザーが「午後パー」をするべくシミュレーションしてみると……。
≪15時に退社。通勤時間1時間をかけて、16時に園までお迎え。このあと、子連れで買い物。あれこれねだられて、それをなだめながらやっとの思いで買い物を終え、帰宅したら17時前。そこから食事を作ったら……≫
な~んだ、ただのちょっと早い夕食なんじゃありません? ぜ~んぜん、「午後パー」じゃねえし。
一方で、専業主婦の場合は?
もし、「妻は専業主婦だから、家事・育児は妻に一任しています」という家庭で、夫だけ「平日昼間にゆったり贅沢午後ブラショッピング」「昼からたっぷり『アフター3エンタメ』を楽しもう」なんてやってたら、「主婦にもプレミアムフライデーをよこせ!」と主張したくなりますわ。
このプレミアムフライデー、ワーキングマザーは、「保育園にすぐお迎えに行かなきゃいけない」とこぼすかもしれないけれど、保育園側から見たらどうだろう。
もし、保護者全員が15時に退社できるとして、そこからまっすぐ園に来てくれたとしても、おそらく16時頃になるだろう。そこですべての園児が帰宅したとしても、残務処理やらなんやらで、職員の皆さんの帰宅時間はそれより遅くなる。保育現場では、「月末金曜日だから15時に仕事終わります。園児は園内に置いていきますので、適当にピックアップしにきてください」というわけにはいかない。だから、保育士にプレミアムフライデーは考えられない。
いずれにしても、プレミアムフライデーの目的が消費活動の促進という時点で、そもそも早く帰れない業種・職種は必ず発生する。消費活動の受け皿となる飲食業界や小売業界などは繁忙期だ。
「店舗スタッフもプレミアムフライデーにつき、お好きなものをご自由に持って行ってください。なおお金はそこのザルにどうぞ」「旅行は徒歩と野宿でお願いします」というわけにはいかないのだ。
そう考えると、このプレミアムフライデー、サービスを享受する側と提供する側で、格差が広がるだけになりそうだ。
結局、プレミアムフライデーを活用できるのは、こんな人ではないだろうか。
・15時退社しても業務や業績にさほど支障がない大企業に勤務
・15時退社しても給料が減らない正社員
・消費活動をするのに十分な給料をもらっている人
・自分がすべき家事・育児は少ない
え、これ、昭和のサラリーマン?
公式ページの過ごし方例に出てくる写真は若い男女だが、最近の若い人は将来に対して不安を抱えていて消費活動をしたがらない傾向にあるから、会社が終わったらまっすぐ家に帰ってゆっくりしたいと考えそう。そもそも、サービスを提供する側の仕事についている人も多そうだ。
つくづく思う。プレミアムフライデーは誰のもの?
若い世代が将来に不安を覚えない社会、子育て世帯の親が自分自身のためにお金を使っても後ろめたくない社会なくして、消費活動の活性化はありえない。
そこをまるっと無視して「15時退社」だけ始めたって、公式ページの楽しそうな写真は絵に描いた餅にしかならないと思うのだが、どうだろう。
経済産業省が経団連などと連携して検討してきた施策で、毎月、月末の金曜日は15時に退社をし、消費活動を促そうというものだ。

去年の12月、ニュースを聞いてまっさきに思ったのは、
「あ……保育園から『15時に退社できるんだったら、まっすぐお迎えに来てくださいねっ』って言われそう……」
ということだった。
というのも、私の娘の通う保育園は、「保護者が休みの日は、子どもも休み」「勤務先から保育園へは、買い物などの寄り道せずにまっすぐお迎えに行くこと」「家に買い物の荷物を置いてお迎えに行ってもダメ」というルールがあるからだ。
保育園によって、このあたりのルールの厳しさはさまざまだと思うが、私の通う園のルールは決して珍しくはないと思う。
■母親業にプレミアムフライデーはない
プレミアムフライデーの公式ページ( https://premium-friday.go.jp/ )をのぞいてみた。15時に退社して、どんなことができるのかが書いてある。
その内容は、下記のとおり。
・ちょっと長めの休日で普段は行けない2.5日旅
・平日昼間にゆったり贅沢午後ブラショッピング
・大切な人と夕方からゆっくり「アーリーディナー」
・昼からたっぷり「アフター3エンタメ」を楽しもう
・家族で揃って料理を作って「午後パー」をしよう
あ~っ、まぶしい!
そして何なんだろう、この置いてけぼり感……。
いったい、小さな子どもを持つ母親は、この中の何ができるのだろうか。
ワーキングマザーの場合、保育園ルールによって、
・平日昼間にゆったり贅沢午後ブラショッピング
・大切な人と夕方からゆっくり「アーリーディナー」
・昼からたっぷり「アフター3エンタメ」を楽しもう
は無理目だ。
「ちょっと長めの休日で普段は行けない2.5日旅」をしようとしても、小さい子連れで夜間移動は、子どもにとって負担なだけだろうなあ。つまり2.5日旅で海外も現実的ではないし。
できることといったら、せいぜい最後の「家族で揃って料理を作って『午後パー』をしよう」くらい。でも、その料理は誰が作る?テーブルの上は誰が片づける?
ワーキングマザーが眼中にないこのノーテンキな無神経さ、いつぞやの「3年間抱っこし放題」と通ずるものがあるような気がするのですが。
とはいえ一応、ワーキングマザーが「午後パー」をするべくシミュレーションしてみると……。
≪15時に退社。通勤時間1時間をかけて、16時に園までお迎え。このあと、子連れで買い物。あれこれねだられて、それをなだめながらやっとの思いで買い物を終え、帰宅したら17時前。そこから食事を作ったら……≫
な~んだ、ただのちょっと早い夕食なんじゃありません? ぜ~んぜん、「午後パー」じゃねえし。
一方で、専業主婦の場合は?
もし、「妻は専業主婦だから、家事・育児は妻に一任しています」という家庭で、夫だけ「平日昼間にゆったり贅沢午後ブラショッピング」「昼からたっぷり『アフター3エンタメ』を楽しもう」なんてやってたら、「主婦にもプレミアムフライデーをよこせ!」と主張したくなりますわ。
■家に帰りたくないオッサンしか楽しめなくない?
このプレミアムフライデー、ワーキングマザーは、「保育園にすぐお迎えに行かなきゃいけない」とこぼすかもしれないけれど、保育園側から見たらどうだろう。
もし、保護者全員が15時に退社できるとして、そこからまっすぐ園に来てくれたとしても、おそらく16時頃になるだろう。そこですべての園児が帰宅したとしても、残務処理やらなんやらで、職員の皆さんの帰宅時間はそれより遅くなる。保育現場では、「月末金曜日だから15時に仕事終わります。園児は園内に置いていきますので、適当にピックアップしにきてください」というわけにはいかない。だから、保育士にプレミアムフライデーは考えられない。
いずれにしても、プレミアムフライデーの目的が消費活動の促進という時点で、そもそも早く帰れない業種・職種は必ず発生する。消費活動の受け皿となる飲食業界や小売業界などは繁忙期だ。
「店舗スタッフもプレミアムフライデーにつき、お好きなものをご自由に持って行ってください。なおお金はそこのザルにどうぞ」「旅行は徒歩と野宿でお願いします」というわけにはいかないのだ。
そう考えると、このプレミアムフライデー、サービスを享受する側と提供する側で、格差が広がるだけになりそうだ。
結局、プレミアムフライデーを活用できるのは、こんな人ではないだろうか。
・15時退社しても業務や業績にさほど支障がない大企業に勤務
・15時退社しても給料が減らない正社員
・消費活動をするのに十分な給料をもらっている人
・自分がすべき家事・育児は少ない
え、これ、昭和のサラリーマン?
公式ページの過ごし方例に出てくる写真は若い男女だが、最近の若い人は将来に対して不安を抱えていて消費活動をしたがらない傾向にあるから、会社が終わったらまっすぐ家に帰ってゆっくりしたいと考えそう。そもそも、サービスを提供する側の仕事についている人も多そうだ。
つくづく思う。プレミアムフライデーは誰のもの?
若い世代が将来に不安を覚えない社会、子育て世帯の親が自分自身のためにお金を使っても後ろめたくない社会なくして、消費活動の活性化はありえない。
そこをまるっと無視して「15時退社」だけ始めたって、公式ページの楽しそうな写真は絵に描いた餅にしかならないと思うのだが、どうだろう。
![]() | 今井 明子 編集者&ライター、気象予報士。京都大学農学部卒。得意分野は、気象(地球科学)、生物、医療、教育、母親を取り巻く社会問題。気象予報士の資格を生かし、母親向けお天気教室の講師や地域向け防災講師も務める。 |
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