年度末、保育園の当落で育児界隈がざわつく季節だ。

「保育園落ちた日本死ね!!!」という匿名ブログの衝撃から1年経ったわけだが、待機児童問題は解決するどころか、激化しただけのようにも感じる。

さて、筆者は“保活”を6年間で5回経験している。
たぶん、人よりちょっと多いほうだと思われる。もう転園の必要もない最適な場所に落ち着いたことによって、我が家の保活は昨年の秋で終わったのだが、率直に申し上げれば、「保活なんてもうこりごり」なのである。


■地方に行けばいいんですか? 海外に行けばいいんですか?


「地方」という言い方に違和感を覚える人がいるかもしれないが、ここでは便宜上、首都圏ではないエリアを「地方」と呼ぶことにする。

待機児童のニュースをネットで見るたびに、それに連なる“批判コメント”にも体力を奪われる。それらのコメントには、「じゃあ地方に行けよ」というものがよくあるが、地方に仕事がなくて上京してきた夫を持つ身としては、「じゃあ地方に仕事つくってよ」と言いたくなる。

なお、待機児童が多いのは首都圏に限ったことではなく、地方の人口集中都市(福岡や仙台など)でも顕著だという。

また、「もう日本から出ちゃえよ」という声には、外国も似たり寄ったりだという事実をお知らせしたい。

筆者が読んだのはアメリカ、イギリス、ドイツでの保活事情だったが、けっしてホイホイ入れる感じではなさそうだ。そして、アメリカやイギリスの保育料はべらぼうに高い。

▼参考記事
・アメリカの例:「米国の保活事情 日本の数倍もかかる保育料」 日経DUAL 2015.10.21
・イギリスの例:「給料の1/3が保育費に吹っ飛ぶ…!イギリス・ロンドンの“保活”は日本より大変!?」 グローリア 2014.12.12
・ドイツの例:「ドイツだって託児所不足。我が国の保活事情【ドイツでママになる#20】」 MYLOHAS 2016.03.05



身も蓋もないことをいうが、どこに行っても程度の問題で同じことなのだ。それならば、できるだけ家族の希望に沿った形で子どもを育てていくしかないのだろう。

そもそも、どの土地に行っても適応できる人ばかりとは限らない。
また、在宅勤務制度を見直す企業も出てきているという報道もある昨今、私のような職業でも地方に引っ越すのは、現在のところあまり得策ではないのかもしれない。

■「保活」しなければ入れないという違和感は国も認識


昨年、厚生労働省が≪「保育」について あなたの声を お聞かせください≫というお題目でアンケートを実施していた。その結果が公表されているのでご紹介したい。

「『保活』の実態に関する調査」の結果等について|厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000126129.html

ホームページ上での回答だったせいか、情報収集にネットを使っている層が大変多い結果となっている。自由回答欄にはいろんな立場の方がいらっしゃったが、だいたいネットで噴出している保活への不満がここに集約されていたように思う。

意見を集めただけで終わってしまわないように、今後、保育園ユーザー側からも継続した国への働きかけが必要だろう。

例の「保育園落ちた」ブログのような、一発ドカンと爆弾を投下するのは、影響も大きいが、当たるかどうかわからないという点でリスクも大きい。

以前、ある法案を通すためのお手伝いをする機会があったのだが、とにかく段取りをしっかり行っていた印象がある。
「実際に困っている人がここにいる(=実名、顔出しでの証言)」
「困っている人は何人いる(=実数)」
「解消するためにはこれが必要だ(=提案)」
という数値やデータの部分と人脈、マスコミの取材対応というところがキモになるのではと感じた。

もしかしたら、怒りが燃料なのが見えるうちは、何かがひっくり返ることはないのかもしれない。ただ、「テクニックが必要」といわれると、なんだか攻略法みたいな気がして違和感はあるのだが……。

■保活とは“テクニック”と“情報戦”なのか


「なんか、保育課ってちゃんとつっこまないと教えてくれないことあるじゃない?」

次年度の0歳児入園を目指していた知人と話していたときのことだ。

ポイントをあげるために認可外にいったん入れるというのはもはや定番の手法になりつつあるが、その預け先についても細かく指定されており、有資格者数や月額の金額や日数、どれが欠けてもポイントはつかない。その知人は申し込みの段階で、保育課の方から加点条件が足りていないことを告げられたのだという。

去年の我が家の話を思い出した。
夜間保育ポイントがつく日数をきちんと把握していなかったために、審査期間の利用日数が足りず、希望園への転園が叶わなかったのだ。入園申し込みの説明には「夜間保育を週3回」とあったが、実際には月12日という基準があった。そのことを、後日保育課の窓口で知るのだ。

2月下旬生まれの次男は0歳4月には入園できず、認可外をおさえたのち、5月にすべりこめそうな認可園を総あたりする作戦に出た。認証園の5月入園は絶望的だった。

育休がつかなかったので、復帰の期限は産後2ヶ月。次男がどこかに入園して、仕事に復帰できなければ職を失い、長男の在園資格まで失うことになる。ギリギリと、締め切りは迫っていたのだ。きょうだい加点があったのでポイントは高かったが、“時期が悪い”の典型的な例だろう。

1歳4月での転園は、新規入園より手持ちのポイントが下がり、夜間ポイントがつかなかったために、希望園に入ることができなかった。しかし、前の園より距離などの条件はよくなったのでよしとしつつ、“ワンチャン”にかけて本命園への転園申請を出し、確実に加点をつける方向で日々を過ごしていた。昨年の年度途中の転園はそれが実った形だ。

【関連アーカイブ】
早生まれの保活・最終章 ―― きょうだい同園を目指した1歳児クラス転園
http://mamapicks.jp/archives/52196500.html


学生のころ、テストにはテクニックが必要だと言われて特訓したことを思い出す。
……受験ならまだいい。本人の努力の結果如何で合否判定がある。しかし、保育園はどうなのだろう。本人=今そこですやすやと寝ている赤ちゃんの、努力とは……?

こうなると、あやしげな情報商材に手を出してしまう人の気持ちはわからなくもない。

実際に数件、その手の情報商材を見つけた。(有料ブログを含む)
おそらく、絶対に保育園に入れる方法なんてものは存在せず、各々が自治体のルールを読みこんだり聞きにいって、自分に合った園を探すしかないのだ。

そして、よくいわれる議員のコネというのも、実際はないものと思っていたほうがいいだろう。しかし、彼らは情報を持っている。適度な距離感で、たとえばSNSをフォローして連絡が取れる程度の付き合いがちょうどいいのかもしれない。

そうでなくても育児中の、とくに母親はカモにされやすいという。困っている時に近寄ってくる人がどういう人なのかを少し気にしておいても、悪いことではないと思うのだ。

■不承諾でも早生まれでも、あきらめないで!


しかし、5回ほど保育園への入園申請を繰り返して今思うのは、

「やっぱり、なんかおかしくねえ?」

である。

早生まれ児の保活で苦労した身としては、東京23区の保育課に改めて、「早生まれの救済策のようなものはあるか?」と質問してみたのだが、「ある」と回答があったのは新宿区と豊島区のみであった。

豊島区は入園予約というという名称で、8月以降の産休・育休あけの方を対象にしている。

入所予約制度|豊島区
http://www.city.toshima.lg.jp/260/kosodate/kosodate/hoikuen/nyuen/014128.html

こちらでは、筆者のように2月末生まれで産休あけ復帰が必須となっている人は利用できないのだが、新宿区では4月入園の締め切り以降、4/1生まれまでを対象に、4~6月入園の出産前の仮申し込みが可能となっており、狭き門ではあるが、可能性がないわけではない。

また、新宿区には0歳児の10月入園枠というのが存在し、認可園と認定こども園のうち19園で、1園あたり3~4人の枠を設けているとのこと。

平成29年度 新宿区 保育園・子ども園入園(転園)申込みのご案内|新宿区
http://www.city.shinjuku.lg.jp/kodomo/hoiku01_0029.html

東京23区で、早生まれに最も手厚いのは新宿区ということになるだろうか。

しかし、近年は認可外ポイントで並ぶことが増えたせいなのか、居住年数での判定に持ち込まれるケースもよく聞くようになった。となると、保育園を求めての引っ越しが不利に働くことがある。

また、保育園に入りやすい自治体の公立小学校や中学校が子どもにとってよい環境か、というのはよく調べないとわからないのが実情だ。

子どもがいる状態で引っ越しをし、数年住むうちに地元カルチャーにどっぷり浸かる、ということは都心部でもある。そこからさらに、新天地を求めて引っ越すのは体力も気力もいるし、小学校に上がると、「休むときは近所の友だちに連絡帳を渡す」というミッションが追加され、地縁が必要になることは多い。

受験を検討しないのであれば、地元の学校の評判までを調べたうえでの引っ越しが必要になるだろうが、妊娠中、まだ子どもの顔も見ていないうちに、小学生や中学生の環境を想像することははっきり言って難しいだろう。

どの自治体でも、立地が悪いエリアであれば5~6月に枠が空いたり、年度途中開園の新規園に入園できる可能性もある。また、小規模保育の園も、3歳以降の受け皿となる連携園が用意される(※自治体によって異なることがあるので確認を)。さらに、筆者の居住区は次年度から導入するようだが、認証だけでなく認可外保育園に通う場合の保育料に対しても助成が出る場合がある。

先に紹介した厚生労働省のアンケートでも、86%は第一希望じゃなかったにせよ、認可保育園に入園できているというデータもある。不承諾通知を受け取ってしまった方も、どうか落ち着いて、今できる、考えうる限りの策を淡々とこなしていくことで道は開けるかもしれない。

できるだけ近い将来に、希望した人が希望した時期に保育園を利用できるようになっていて欲しいと願う。

ワシノ ミカワシノ ミカ
1976年東京生まれ、都立北園高校出身。19歳の時にインディーズブランドを立ち上げ、以降フリーのデザイナーに。並行してWEBデザイナーとしてテレビ局等に勤務、2010年に長男を出産後は電子書籍サイトのデザイン業務を経て現在はWEBディレクター職。