はじめて息子と映画館で見た映画は、「トイ・ストーリー3」だった。公開年を調べると、どうやら3才の終わり頃だったらしい。暗闇を怖がる子ではなかったけれど、上映中ずっとじっとしてられるのかなと内心不安な気持ちでいたら、大スクリーンに夢中でひたすらポップコーンを食べ続け、ジュースをどんどん飲んでケラケラ笑い、ものすごいくつろぎっぷりだったのをよく覚えている。


■映画は子どもに付き合う時間に


それ以降、いろいろ観たものの、当たり前ながらすべて吹き替え版。ディズニー&ピクサー系のあらゆる登場人物は日本語でしゃべる。そして、毎年のようにウルトラマン映画に付き合うなどの年中行事も差しはさまれる。あぁ、この1本にこの値段を払うなら、私はあっちがみたいのに……そのうちそんなことすら思わなくなったりした。

■字幕OKは大きな転換期!


それに大きな変化が生まれたのが、息子が字幕に対応できるようになったときだ。英語の映画を字幕で観るのをはじめてOKしてくれたのが「ジュラシック・ワールド(2015年版)」で、9才の終わりくらい。決して全部文字を読みとれるなんて状態ではなかったけれど、映画って種類によっては、映像とある程度の筋を把握してドーン!バーン!と楽しめるのがわかって納得した、という感じだった。

この頃からようやく家で観るDVDも字幕でOKが増えてきた。徐々に親の「私も観たい」と感じる作品を一緒に観ることができるようになってきたのは本当にうれしい。オンラインの定額動画サービスもあるので、80年代90年代の洋画のアクションものとかSFものとか、パニックものとか、冒険ものとかも一緒に見たら楽しいかなあと思って一気にターゲットが広がる。

■「観せたくないシーン」をどう判定する?


ところが、だ。一方で、用心すべき事項が増えてくる。その映画に、「子どもにはまだ早い」系のシーンが含まれていたかどうか、全く思い出せないのだ。何をもって見せたくないと思うかは人によって基準が違うだろうが、私の中では、性的なシーンはまだ困る。キスくらいまでにしておいてほしい。ゴジラやガメラ、ウルトラマン系など日本の特撮ヒーローものを勝手に子どもがどんどん観てもまぁその辺は心配する必要がなかったのだけれど、昔の洋画系にどんな表現が含まれていたかまでは思い出せない。

映画にはレイティングシステムがあり、日本の場合、映画倫理機構(映倫)(http://www.eirin.jp/index.php)が審査をして4つの基準を設けている。G(年齢にかかわらず誰でも観覧できる)、PG12(12 歳未満の年少者の観覧には、親又は保護者の助言・指導が必要)、R15+(15歳未満は観覧禁止)、R18+(18 歳未満は観覧禁止 )なのだが、この記載が意外と見つけにくい。例えばAmazonとかTSUTAYAとかで商品検索なんかをしても、その判定をさっと見つけることができない。

■IMDbがものすごく便利


そんな時に便利で利用するのがIMDb(Internet Movie Database)(https://www.imdb.com)だ。90年代から存在していたネットで老舗の映画データベースで、とにかく情報が豊富。ユーザー参加型で情報が更新され充実していくタイプのサイトだ。レイティングも当たり前のように映画タイトルのすぐ下に記載されている。アメリカのMotion Picture Association of America(MPAA)によるレイティングシステムだと、G(General audiences)、PG(Parental guidance suggested)、PG-13(Parents strongly cautioned)、R(Restricted)、NC-17(No one 17 and under admitted / Adults only)のいずれかがつく。

IMDbで検索すれば、とりあえずささっとレイティングを確認できる。GならOKだし、RとNC-17は除外すればいい。しかしここで悩むのがPGとPG-13の場合なのだ。何がひっかかってその判定なのかが知りたい。言葉か、残虐さか、暴力か、ドラッグか、性的なシーンか。

ちょうど「ジュラシック・ワールド」が公開されたころ、息子が前3作をコンプリートしてから映画館に観にいこうと思ったもののとりあえず1作目の「ジュラシック・パーク(Jurassic Park)」をIMDbで調べたら「PG-13」とある。私もかつてこのシリーズは全部観たけれど、あれ、なにがそんなにダメだったかな、やっぱりヒトが恐竜に食べられちゃうシーンがあるからかな……。他にも何かあったっけ……。記憶っていうのはけっこうあてにならない。

■IMDbのParents Guideが最強


そこで最強に便利なのが「Parents Guide」の部分。親向けのガイドで、たいていの映画に掲載されている。「Parents Guide」詳細を見ると、各国のレイティングの判定が一覧できる上に、「Sex & Nudity」「Violence & Gore」「Profanity」「Alcohol, Drugs & Smoking」「Frightening & Intense Scenes」といった項目別に、ネタバレ前提でこと細かにどんなシーンがあるか説明してくれている。

例えば「ジュラシック・パーク」の「Sex & Nudity」の部分には、「お尻のクローズアップショットがある」(裸ではない)とか「パソコンの壁紙がビキニ姿の女性」だとか、登場人物同士が好意を寄せるちょっとした表現やちょっとしたジョークに至るまで、とても丁寧に拾い上げてくれている。「Violence & Gore」も実に詳細。親が子どもに許容するかどうかの判断をするのには十分な情報が得られる。おかげで、私は「ジュラシック・パーク」はこの程度なら問題なしと判断できて、念のため「人が恐竜にけっこうちゃんと食べられちゃうからね」と前置きした上で、息子は楽しんだ。

■適度なタイミングの判断とフォロー


親が検閲して禁止するとかそういう管理主義的な意味合いではなく、子どもの発達や性格に応じて、早すぎると思う表現は先延ばしにすることくらいの判断は、まだ小学生くらいのうちは親がしていいだろう。観てOKと思う範囲でも、少しびっくりするシーンや微妙なシーンがあるなら、どうやってフォローしたり説明するかを心得ておけるので、これはすごく便利なのだ。

予告などを見たり図書館やレンタルDVDショップで子どもが「ジャケ買い」的に観たがる映画はどんどん増えてくる。有名どころはたいていそんなことはないのだけれど、アクションやパニックものの体裁だけれど実質裸がいっぱいでどっちがメインかわからない! みたいなのも混ざっている可能性はある。自分も観たことがない映画とか、記憶が定かでない場合は、その場でIMDbで検索してある程度あたりをつけ、OKか「もっと大きくなったらね」かどうかを判断している。

かつては「グレムリン」が怖くなってDVDを途中でギブアップした息子も、小6になると「ジョーズ」や「ジュラシック・パーク」などを連作でコンプリートして、特撮やCGのクオリティで時代の移り変わりを楽しむくらいの余裕が出てきた。子どもに観せていいものか、かなり微妙なB級映画も楽しんだりもするのも、まぁいいか、の範囲で親の私も少し緩めに構えている。

大丈夫かと思っていたら、息子がけっこう意外なところで怖さを感じていたりすることもあって、自分の基準で安心してはいけなかったかもと反省することもあるけれど、今みたいにテレビ感覚で昔の映画をどんどん観られる環境は恵まれていて、観ないのはちょっともったいない。

今の年齢で親と一緒に観て楽しい映画もあれば、適度な年齢になってひとりで観た方が味わい深い映画もある。そのうち親と映画なんて観なくなるだろうし、今はたくさん一緒に楽しめたらいいなぁと思っている。

狩野さやか狩野さやか
Studio947デザイナー・ライター。ウェブ制作と共に、技術書籍やICT教育関連記事を執筆し、「知りたい!プログラミングツール図鑑」、「ICT toolbox」では、子ども向けプログラミングの情報発信に力を入れている。育児分野では、産後の夫婦の協業がテーマの著書『ふたりは同時に親になる 産後の「ずれ」の処方箋』があり、patomatoを運営しパパママ講座の講師も務める。2006年生まれの息子と夫の3人暮らし。