昨年9月、当サイトで中東・シリアのマタニティーマークについて紹介をしたところ、大きな反響を呼んだ。しかしその後、残念ながらシリアは内戦により国内情勢は悪化、つい先日には日本人ジャーナリストが殺害されるという大変痛ましいニュースが記憶に新しい。

そんななか、同地に青年海外協力隊の一員として派遣され、母子保健の改善活動に関わられた保健師の中川智恵氏より、現地でのマタニティーマーク普及の経緯について、ぜひ多くの日本の親子に知ってもらいたいということでご寄稿をいただいたので紹介したい。


私がシリアでの生活を始めたのは今からちょうど2年ほど前でした。青年海外協力隊というJICA(国際協力機構)の事業のひとつで、当初の予定では2年間シリアで保健師をすることになっていました。

シリアは、中東地域と呼ばれる国の中にあり、トルコ、イラク、レバノン、ヨルダン、イスラエル、パレスチナに接するアラブの国です。宗教は約90%がイスラム教徒で、公用語はアラビア語になります。


そのころは、現在世界中のニュースで流れている内戦状態のシリアとはまったく違う平和な国でした。真っ黒のアバヤと呼ばれる民族衣装に、ヒジャーブ(髪を隠すためのスカーフ)を身に付けた女性、男性はターバンのようなものを頭に巻く人が街中にいて、街を歩けば「ようこそ」と、街行く人に満面の笑みでお茶に誘われることが日常でした。

お茶に付き合えばその後は夕食にも招待されます。そして家族みんなで最高のおもてなしをされます。日本にはあまりないウェルカム精神に最初はびっくりしました。そんな人たちとのつながりを積み重ねることで、中東独特の怖そうなイメージはやがてなくなりました。「こんにちは」という挨拶は「ようこそ」と言う意味の言葉を使う、そんなお国柄なのです。
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