MAMApicks -子育て・育児・教育ニュース&コラムサイト-

親になったから、見えるものがある。

ダイバーシティ

【書評】『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』――私たちが直面する「壁」にリンクするトピックが随所に綴られる

4月の小学校入学から半年が経った。

入学前からやんわり聞かされてはいたものの、配布されるプリントが多い、準備する持ち物が多い、PTAの活動や保護者会などで親の稼働が増える、夏休みなど長期休みは学童用のお弁当を毎朝用意しなければならない……など、小学校には数多の試練が待ち受けており、「小1の壁」というやつをことごとく体感した一学期。

一方、当事者である娘といえば、学校と学童という新しいコミュニティがふたつもでき、保育園時代のように昼寝もなくなり、体力的にはかなり消耗した様子ではあったものの、ものすごい順応性を発揮して、学校でも学童でもよろしくやっている。

ノートラブルとはいかないまでも、生活面でも成長面でも彼女にとってはよい変化が多く、子育てのステージが一段上がったかも!なんて感じていたこのタイミングで出会ったエッセイが、今の気持ちにとてもフィットする良著だったのでご紹介したい。

あまりの面白さに怒涛の勢いで読了し、購入してから現時点でもう3~4回通しで読んでしまった、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(ブレイディみかこ/著 新潮社)は、ジャンルとしては「子育てエッセイ」なのだけれど、今まで数々読んできた育児本とは一線を画す、異質とも言える存在だ。


続きを読む

人生の大部分はガチャ!? ――『まんが アフリカ少年が日本で育った結果』星野ルネさんインタビュー

娘の就学を来春に控え、何かにつけ周囲から「小学校に入ると色んな人がいるよ~」と言われるこの頃。
学校のお友だちや先生のみならず、学童や習い事でどんどん人との関わりが増えていくことを想像していると、頭に浮かぶのは、「多様性」という言葉。色んな経験をして、様々な価値観に触れて……みたいなぼんやりしたイメージを思い描いているが、親である私たちは娘に何を伝えていこうか。
そんなことを考えていた折、一冊の本に出会った。


『まんが アフリカ少年が日本で育った結果』は、カメルーンに生まれ、母親の結婚を機に4歳で日本にやってきた星野ルネさんが、言語や文化のギャップに直面しながら、鋭くかつユニークな視点で見つめた、自身の日常や成長が綴られたコミックだ。

SNSで公開した漫画が大きく話題を呼び、大きく描きおろしを加えて書籍化された本作には、笑えて、かつ新鮮に感じられるエピソードが満載。ヒットを受けて第2弾の出版も決定し、現在各所で引っ張りだこの星野ルネさんにインタビューを敢行した。

続きを読む

「私は私」大坂なおみさんの言葉より ――どんな子どももそう思えるようにまずはまわりの大人から

全米オープンテニス2018で優勝した大坂なおみ選手が、来日記者会見で、「自分のアイデンティティをどう考えるか?」ときかれ、「考えたことがない。私は私」と答えたことは記憶に新しい。

記者の質問の内容も趣旨もわかりづらく、さらに通訳の不備もあったとの報道を読んだが(たしかに、動画を見ても通訳の説明がよくわからなかった)、人種も経歴も実に多様な人が住むアメリカで、人種ではマイノリティにあたるなおみさんが、世界のトップアスリートとなり、「私は私」と20歳ではっきり言える人に育っていることに感動してしまった。


ハイチ系アメリカ人の父親と日本人の母親の間に、大阪で生まれたなおみさんは、3歳の時にニューヨークに移住し、現在はフロリダを拠点に活動している。アメリカの大都市には、そんなふうに人種と経歴が多様な家庭が多い。

しかし、シアトルで親子カウンセリングをしている高田 Dill 峰子先生によると、アメリカで育つマイノリティは、ある程度の年齢になると、自分の人種におけるアイデンティティについて試行錯誤するそうだ。
(参照記事:https://www.junglecity.com/pro/pro-family/finding-your-own-identity/

続きを読む

「著しく違うこと」を親としてどう受けとめるか? ――顔に強い特徴をもつ少年の話「ワンダー」に引き込まれて

「ひとつだけ願いをかなえてもらえるなら、めだたないありきたりの顔になりたい。」
児童書『Wonder ワンダー』(R・J・パラシオ 著/中井はるの 訳・ほるぷ出版)の主人公オーガストは、先天的に顔の形成に問題をかかえ、「きみがどう想像したって、きっとそれよりひどい」顔の持ち主だ。彼が生まれて初めて学校に通うことになった中等部(5年生)の1年目が描かれている。

いかにも「感動」を売りにしたつくりの話なら興ざめなのだけど、これが、とってもいい距離感で面白かったのだ。ストーリーは、登場する子どもの視点で語られ、章によって語り手が変わる。同じ出来事が別の子の視点で次々に語られる展開にぐいぐい引き込まれ、翻訳の日本語のリズムも心地よく読みやすい。


児童書コーナーにある子ども向けの小説で、小学校高学年の息子が先に読んだのだけれど、私も数年前に立ち読みしたきりで気になっていたので、読んでみたらなんだかとてもよかった。 (※本書の刊行は2015年7月)

「『人と違うこと』をどうやって受け止め合うか」っていうことが全体に流れている。

続きを読む

満1歳入園予約制で保活の「格差」は縮まらない ~多様な働き方と保育制度のギャップ~

8月の終わりが近づいた頃、新聞のこの見出しに目がとまった。

満1歳で入園、予約制 認可保育所に導入、厚労省が支援へ 年度途中OK、育休とりやすく
http://www.asahi.com/articles/DA3S12525440.html
(朝日新聞デジタル)

「保活」の現場では、0歳代の4月に合わせて育休を切り上げて保育園に申し込むという現象がある。そもそも年度途中の入所が難しい上、1歳児の枠は0歳からの進級でほぼ埋まってしまうので、入所のチャンスを最大に生かすためだ。なかには「本当は1歳直前まで育児したい人」もいる。

20160912-kano

こうして無理に4月に合わせなくとも、育休切れの満1歳(※1)直前に年度途中で入所できる「予約」制度を作るというのだ。
【※1:現在、夫婦でずらして育休をとるなど一定の条件が整えば、1歳2ヵ月まで可能。保育所に入れないなどの場合1歳6ヵ月まで延長可能】

続きを読む

もしも自分の子どもにLGBTをカミングアウトされたら?

セクシャルマイノリティ、いわゆるLGBT(=レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)に関する独自の調査・研究、情報発信を行う「LGBTマーケティングラボ」では、全国の30代~50代の子どもがいる男女566名を対象に、「もしも自分の子どもにカミングアウトされたら?」というテーマで調査を実施、その結果を発表した。


「カミングアウト」とは、自身の性的指向や性自認を告白することであるが、同調査ではまず、「もしも、自分の子どもからLGBTだとカミングアウトされたらどう思いますか?」と質問。もっとも多かった回答は、「受け入れたくないが、しょうがないので受け入れる」の38.9%であった。

これに続く回答が、「時間をかければ受け入れられる」の27.0%で、「好意的に受け入れる」(4.9%)、「驚くがすぐに受け入れる」(18.4%)と合わせて、前向きに受け入れる姿勢を見せたのは合計50.3%と、ほぼ半数にのぼった。一方で「断固として受け入れられない」という回答は10.8%であった。

続きを読む
フリーワード検索


MAMApicksソーシャルアカウント

最新記事
月別バックナンバー
執筆者一覧

MAMApicksって何?

編集長:深田洋介

学研の編集者を経てネット業界に。育児、教育分野を中心にネットメディアで10数年にわたり活動中。思春期の娘の父。

藤原千秋

おもに住宅、家事まわりを専門とするライター・アドバイザー。2001年よりAllAboutガイド。三女の母。

河崎環

教育・家族問題、世界の子育て文化、書籍評論等、多彩な執筆を続ける。家族とともに欧州2ヵ国の駐在経験。

江頭紀子

経営、人材、ISOなど産業界のトピックを中心に、子育て、食生活、町歩きなど のテーマで執筆。二女の母。

狩野さやか

ウェブデザイナー・ライター。技術書籍やICT教育関連の記事を中心に執筆。著著に『ふたりは同時に親になる 産後の「ずれ」の処方箋』。

恩田和

新聞記者、アメリカ留学を経て、2010年第一子出産。育児、教育分野の取材を続ける。南アフリカで4年間の駐在を経て現在米国在住。

西澤千央

フリーライター。二児(男児)の母だが、実家が近いのをいいことに母親仕事は手抜き気味。「サイゾーウーマン」等でも執筆。

川口由美子

管理栄養士としてメーカー勤務の後、独立。現在は雑誌やWEBで活動。夫の転勤に伴い2004年よりアジアを転々と。二児の母。

ワシノミカ

フリーデザイナーとして活動後、TV各局のWEBセクションを転々とし、現在はWEBディレクターとして活動中。二児の母。

真貝友香

ソフトウェア開発、携帯向け音楽配信事業でのSE業務を経て、マーケティング業務に従事。現在は夫・2012年生まれの娘と都内在住。

大野拓未

米・シアトル在住。現地日本語情報サイトを運営し、取材コーディネート、リサーチなどを行う。家族は夫と2010年生まれの息子。

福井万里

大手SIerのSEから、東日本大震災を機に退職し、ライター活動を開始。2012年に結婚&長男を出産、その後シングルマザーに。

大塚玲子

編集者&ライター。編プロや出版社勤務経験後フリーに。結婚、離婚や子ども、家族をテーマにした仕事を数多く手がける。

加治佐志津

絵本と子育てをテーマに執筆。これまでに取材した絵本作家は100人超。家族は漫画家の夫と2013年生まれの息子。

西方夏子

フィンテック系企業に所属。ワーキングマザーとしてフリーランスと会社員の両方を経験。夫の海外赴任に帯同中、2012年ドイツで長女を出産。

森田亜矢子

コンサルティング会社、リクルートを経て、第一子出産を機に退職。現在は食育・マザーズコーチング講師、ライターとして活動。

望月町子

子どもが1歳半になったころから“子連れ出勤”を開始、日々をブログ「1歳からの子連れ出勤」に綴る。夫と娘の3人暮らし。

斎藤貴美子

コピーライター。得意分野は美容。最近日本酒にハマり、主に飲んで勉強中。これからの家族旅行は酒蔵見学。二児の母。

今井明子

編集者&ライター、気象予報士。母親向けお天気教室の講師や地域向け防災講師も務める。家族は夫と2014年生まれの長女、2018年生まれの長男。
ニュース配信中
livedoor
ameba
mixi