
“人生最古の記憶”について考えたことがあるだろうか。
筆者の最古の記憶は、地元の私立幼稚園の受験日。
ハサミを持ってまっすぐな線を切るものだったのだが、「こんな簡単なことやらせて、バカにされているのかな」とぼんやり考えたのを覚えている。
「俺?……小1かなあ」
夫に同じ質問をしてみたところ、そのような回答を得た。
……えっ? 小1??
幼稚園の記憶がばっさり抜け落ちているの???
自分がアベレージだと思ってこれまでやってきたので、軽く衝撃を受けたのだった。
■育児、それは過去の自分との戦い
「赤ちゃん生まれても、誰かと比べたらダメよ、この子はこの子なんだから」
長男が生まれる前、たしか母親にそんなことを言われた。
「……そうはいわれても、相対評価して安心したいし」
はじめての育児では基準がわからない。
何ができたらOKで何だとNGなのか、そもそも誰がジャッジするのか。
“自己肯定感”“自尊心”
育児界隈で頻繁に目にするそれらのワードが、一人目の育児においてたびたび筆者を苦しめた。
「誰とも比べない、ありのままのわが子を受け止めて」
子どもの自己肯定感を高めようと気をつかうほど、自分がどんどん空っぽになる気がして、自分自身の自己肯定感は低くなり、自尊心はどんどん傷ついていったのだった。
やがて、安心したいがための“相対評価”の比較対象先は、保育園の同級生でも近所の子でもなく、非実在である“長男と同じ年のころの自分”になっていくのだ。当時の記憶を掘り起こしながら。
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