言葉を覚えたての息子は、「ありがとう」ブームだ。
なんでも「ありがとう」。気持ちがこもっていない。たぶん、意味はわかっていない。

りんごをもらったら「ありがと」
ギャン泣きした病院の診察の後でも「ありがと」
しまいには、人におもちゃを渡しても「ありがと」これは……。
私が「蟻がいるね」といっても、「ありがと」これは空耳?

それでも、まわりの大人たちは、一気に微笑んでしまう。

かたや、大人の私。
席を譲ってもらうなど、助けてもらった時に、「すみません」とばかり言ってしまう。

ベビーカーでスーパーに行き、狭い通路を譲ってもらったら「すみません」
陳列棚を少しずらした後始末で戻してくれたら「すみません」
レジの後、店員さんに袋詰めの台までかごを運んでもらっても「すみません」

あまりに言い過ぎて、潜在意識で「育児しててすみません」という気持ちになっていく。
そして、世間では「ご心配をおかけしてすみません」という言葉が踊る。

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