子育てする家族のありようもさまざまな時代だ。
共働き世帯もあれば、専業主婦世帯もあり、単身赴任やシングル世帯もある。親元から離れた核家族だけでなく、三世代同居あるいは近居の家族もいるだろう。

その形態は、それぞれの家族における夫婦や親子間の人間関係と役割分担、稼ぎを得るための仕事や職場の状況、あるいはそもそも当事者たちが思い描いている家族観など、望む望まないに関わらず、その身を置いた環境の結果、各家族がたどった進化の過程であり、それはじつに多様だ。ましてや他人様のそれに、伺い知れない第三者が茶々を入れるなんてのは無粋でしかない。

いずれにしても人間って、家族という集団生活の最小単位ひとつをとっても、本当に複雑で悩みが尽きないな、と考えていたときに出会った一冊が、今回紹介する『身近な生きものの子育て奮闘記』だ。

生物学的に動物の生態を解説した書籍は数あれど、この一冊はとくに動物の子育て、それもオスのそれに焦点をあてている点で異色だ。著者は、動植物の生態をじつに人間味あふれる視点で考察した書籍を数多く書かれている、稲垣栄洋先生。現在は静岡大学大学院の教授である。

続きを読む